新規事業や新しいプロダクトの立ち上げにおいて、「洗練されたかっこいいサービス名にしたい」「グローバル展開も見据えて英語の造語にしたい」と考える担当者は非常に多いです。

しかし、マーケティングの観点から言えば、安易な「英語」や「かっこいいだけの造語」は百害あって一利なしの危険な選択です。見た目の美しさを優先するあまり、集客の生命線である「指名検索」を自ら放棄してしまうケースが後を絶ちません。

今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・藤井にインタビューを実施。「かっこいいネーミング」に潜む認知負荷の罠と、ターゲットに合わせて最適な名前のトーン&マナー(抽象度)を見極める方法について話を聞きました。

英語表記の罠。フリック入力時代に「読めない・打てない」は致命傷

AAII編集部: サービス名を考える際、「かっこいい英語にしたい」というオーダーは多いのでしょうか。

藤井: 非常に多いです。特にBtoBのITツールや、デザイン性を売りにするD2Cブランドなどでよく見られます。自分たちのサービスを洗練されたものに見せたいという気持ちはわかりますが、私たちはまずそのリスクを徹底的に説明します。

最大のリスクは「読めない・打てない」という認知負荷の増大です。

AAII編集部: 英語だと、そこまで負荷がかかるのでしょうか。

藤井: はい。たとえば、フランス語由来の「XEX(ゼックス)」や、複数の英単語を組み合わせた「SynergyFlow(シナジーフロー)」といった名前をつけたとします。名刺やLP(ランディングページ)上のロゴとして見る分には、非常にかっこいいかもしれません。

しかし、ユーザーがスマホでその名前を指名検索しようとした時、どうなるでしょうか。フリック入力で英語の綴りを正確に打ち込むのは非常に面倒ですし、「Synergy」のスペルを正確に覚えている人は少数です。結果として「カタカナで検索しても出ない」「英語で打つのが面倒だからやめる」という離脱が大量に発生します。

かっこいい造語は、ベネフィットが伝わらない「ポエム」になる

AAII編集部: スペルが難しいと、マインドシェア(第一想起)を獲得する前に検索からこぼれ落ちてしまうのですね。

藤井: その通りです。そしてもう一つの問題は、かっこいい造語は往々にして「意味が伝わらないポエム」になってしまうことです。

以前の記事でもお話しした通り、サービス名で最も重要なのは、顧客に「自分にとってどんな良い未来(ベネフィット)があるのか」を瞬時に伝えることです。しかし、響きのかっこよさだけで作った英語の造語は、提供側しか意味を理解できない「内輪ノリ」になりがちです。

AAII編集部: ベネフィットが伝わらなければ、そもそも広告をクリックしてもらえませんね。

藤井: はい。どんなに機能が優れていても、ファーストビューの数秒で「何をしてくれるサービスか」が伝わらなければ、CPA(顧客獲得単価)は悪化する一方です。「かっこいい」という自己満足のために、ビジネスの実利を犠牲にするのは本末転倒です。

ターゲットの日常から逆算して抽象度を決める

AAII編集部: では、サービス名に英語を使うのは絶対に避けるべきなのでしょうか。

藤井: 絶対にダメというわけではありません。重要なのは、ターゲット層の「リテラシー」と、業界の「トーン&マナー」から逆算して、最適な抽象度(英語にするか、カタカナにするか、ひらがなにするか)を見極めることです。

たとえば、ターゲットが「最先端のWebエンジニア」であれば、アルファベット表記の専門的な造語でもストレスなく受け入れられ、逆に「素人っぽくないプロ用ツール」としての信頼感を生むことがあります。

AAII編集部: ターゲットによっては、英語が正解になることもあると。

藤井: その通りです。しかし、同じITツールでも、日々の実務で忙しく走り回っている「現場の店舗スタッフ」や「中小企業の経営者」の方々がターゲットであれば、パッと見で直感的に読めないアルファベットの羅列は、それだけで「なんだか操作が難しそうだな」という不要な心理的ハードルを生んでしまいます。その場合は、かっこよさを優先するよりも「ド直球な日本語」や「親しみやすいカタカナ・ひらがな」にして、すぐに日常の業務へ馴染んでもらうのがマーケティング的な正解になります。

100案の検証で「実利」と「愛着」の最適解を見つける

AAII編集部: ターゲットに合わせて、どこまで英語や造語にしていいかの「線引き」が必要なのですね。

藤井: はい。そして、その線引きを頭の中だけで行うのは不可能です。だからこそ、AAIIでは「50〜100案」のアイデア出しと検証プロセスを必須としています。

100案の中には、極端に直球な日本語の案もあれば、少しひねったカタカナの案、そして洗練された英語の造語案も意図的に混ぜておきます。それらをテーブルに並べ、事業責任者の方と一緒に「うちのターゲットの日常を考えると、この英語のスペルはハードルになるからやらない」「この日本語だと安っぽすぎるからやめる」と、一つひとつ泥臭くジャッジしていくのです。

AAII編集部: 100案を見比べることで、最適なバランスが見えてくるわけですね。

藤井: その通りです。そしてもう一つ、この検証プロセスで忘れてはいけないのが「自分たちがその名前を心から好きになれるか」という視点です。

AAII編集部: 実利だけでなく、作り手の想いも大事ということですか。

藤井: はい。社名ほどではないにせよ、サービス名にも開発者の想いや熱量を乗せることは、その後の営業活動やチームのモチベーションを左右する重要な要素です。自分たちが愛着を持てない名前では、自信を持って世の中に送り出すことはできません。

この検証プロセスを経ることで、「ターゲットに心理的ハードルを与えない最適な抽象度」と、「指名検索を逃さない認知負荷の低さ(実利)」、そして「自分たちが心から愛着を持てる想いの言語化」。これらを完璧に両立させた、妥協のない最強の1案を確実に導き出すことができます。

最後に:独りよがりを捨て、顧客の検索窓を想像せよ

AAII編集部: 最後に、かっこいいサービス名にしたいと考えている方へメッセージをお願いします。

藤井: 「かっこいい名前をつけたい」という熱量自体は、サービスへの強い愛着の裏返しであり、とても素晴らしいことです。しかし、その名前を検索して、最終的にお金を払ってくれるのはあなたではなく「顧客」です。

顧客がスマホの検索窓でどうやってその言葉を打ち込むのか。その具体的な行動を想像できないネーミングは、ただの独りよがりで終わってしまいます。

AAIIでは、50〜100案の徹底した検証を通じて、あなたの「かっこよくしたい、このサービスを愛したい」という意志と、CPAを改善するという「ビジネスの実利」を、最高のバランスで両立させるネーミングを考案します。マーケティングの力で勝てる言葉を、共に創り上げましょう。

AAII ブランド開発支援:事業を勝たせる社名考案・ネーミング開発

「会社名」や「サービス名」を単なる言葉遊びで終わらせないために。

AAIIでは、ネーミングのご依頼に対して50〜100案の徹底した検証プロセスを実施。ターゲットの属性から逆算して最適なトーン&マナー(英語、カタカナ、日本語などの表記)を見極め、認知負荷を極限まで下げて第一想起と指名検索の獲得に直結する強いプロダクトネーミングを考案します。

さらに、プロのコピーライターによる「タグライン」の開発と、事業成長を見据えたマーケティング戦略、LP制作まで一気通貫で伴走し、確実な売上増に貢献いたします。

▶︎ AAIIの社名考案・ブランド構築支援について詳しく見る ▶︎ 無料相談(壁打ち)はこちら