組織が一定の規模まで成長した時、「ここから先、会社をどうしていくべきか」と立ち止まる瞬間があります。その壁を越えるために「企業ビジョン」を策定しようとする経営者は多いですが、言葉の作り方を間違えると、かえって社員の心が離れてしまう結果を招きます。
今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・フジヰにインタビューを実施。社員を置き去りにしてしまう「ダメなビジョン」の共通点と、組織を再び熱狂させるための「未来の景色」の描き方について話を聞きました。
「業界トップシェア」はビジョンではなく、経営目標である
AAII編集部: 組織の成長が止まった時、新しくビジョンを掲げても現場の反応が薄いという悩みをよく聞きます。なぜ社員に響かないのでしょうか。
フジヰ: 最も多い失敗は、経営陣が「会社の数値目標」を、そのまま企業ビジョンとして掲げてしまっているケースです。
たとえば「2030年までに業界トップシェアを獲得する」「売上100億円企業になる」といった言葉です。これらは経営計画としては極めて重要ですが、ビジョンではありません。なぜなら、会社が儲かって業界1位になったところで、現場の社員にとっては「社長と株主が喜ぶだけ」の話であり、自分たちの毎日の仕事がどう面白くなるのかが全く想像できないからです。
AAII編集部: 会社都合の数字だけでは、人は動かないということですね。
フジヰ: その通りです。企業ビジョンとは、「私たちの事業が成長しきった先に、世の中はこういう素晴らしい状態になっているはずだ」という『未来の景色』です。この景色が描けていなければ、現場の社員は「何のためにこの厳しい目標(数字)を追っているのか」という意味を見失い、ただ疲弊していくだけになってしまいます。
世の中の実例:スペースXが描く、圧倒的に「視覚的」な未来
AAII編集部: 数字ではなく「景色」を描いて組織を熱狂させている、世の中の具体的な事例はありますか。
フジヰ: 究極の事例と言えるのが、イーロン・マスク率いるSpaceX(スペースX)です。
彼らのビジョンは「世界で最も利益を上げる宇宙開発企業になる」といった退屈なものではありません。「人類を多惑星種にする(Making humanity multiplanetary)」、つまり火星に移住するという、極めて明確で圧倒的な未来の景色を掲げています。
AAII編集部: 言葉を聞いただけで、火星に人が住んでいる光景が目に浮かびますね。
フジヰ: はい。このビジョンがあるからこそ、世界中から超一流のエンジニアたちが「その未来を創ることに一枚噛みたい」と集まってきます。そして現場で何度ロケットの打ち上げに失敗しようとも、「これは火星へ行くためのデータ収集だ」と意味づけができ、心が折れることなく挑戦を続けられるのです。
優れたビジョンとは、このように「誰もが頭の中に同じ映像を思い浮かべることができるもの」でなければなりません。
実例:KPIを極めた大手事業会社で痛感した「数字の限界」
AAII編集部: フジヰさんご自身の実体験の中で、ビジョン(景色)の重要性を感じたエピソードはありますか。
フジヰ: 私が以前所属していた大手事業会社での経験が、まさにその本質を突いています。
その会社は、日本でもトップクラスに「事業のKPI」や「目標数値の管理」が徹底された組織でした。戦略部隊が緻密に数値を組み、現場の営業はそれを達成するために異常なまでの熱量で行動する。その仕組み自体は非常に強力で、実際に巨大な利益を生み出していました。
AAII編集部: 数字の力が組織を動かしていたのですね。
フジヰ: ええ。しかし、どれだけ優秀な人材でも、ただ「前年比120%の成長」という数字だけを追わされ続けると、どこかで必ず限界が来ます。「この数字を達成して、一体誰が幸せになるんだっけ?」という虚無感に襲われる瞬間があるのです。
そうしたKPI至上主義の最前線にいたからこそ、私は痛感しました。「数字」は人を走らせるための燃料にはなるけれど、向かうべき目的地(ビジョン)にはならない、と。数字の限界を突破するためには、「この事業を通じて、社会の古い価値観をこう変えるんだ」という、血の通った未来の景色が絶対に不可欠なのです。
数字と景色、両方を翻訳できるパートナーを選ぶ
AAII編集部: 数字の管理だけでもダメ、夢を語るだけでもダメということですね。自社でビジョンを作る際、何に気をつければよいでしょうか。
フジヰ: 経営陣の頭の中にある「事業計画(数字)」と「成し遂げたい理想(景色)」の両方を理解し、繋ぎ合わせることです。
経営者はどうしても数字に引っ張られがちです。だからこそ、外部のパートナーを入れる意味があります。しかし、事業の構造やKPIの厳しさを理解していないクリエイターに頼むと、今度は実体のないポエムを作られてしまいます。
自分たちの事業がどんなKPIで成り立っているのかを理解した上で、「その数字を達成し続けた先にある、ワクワクする社会の景色」をコピーの力で鮮明に描き出してくれる。そういう翻訳ができるパートナーを選ぶことが、強いビジョンを生み出す絶対条件です。
AAII 企業理念・VMV開発支援:社員が「この指とまれ」で集まる言葉を創る
企業ビジョンは、ただの売上目標ではありません。それは、社員やお客様、そして社会全体に対して「私たちが創り出す未来の景色」を約束する、最も重要な旗印です。
AAIIでは、大手事業会社で戦略の数値を追ってきたビジネスの視点と、人の感情を揺さぶるアートディレクター/コピーライターとしての視点を融合させます。単なる数字の羅列を、社員が誇りを持ち、思わず「その未来を一緒に創りたい」と熱狂するような強靭な言葉へと翻訳します。
組織の成長の壁を突破し、全員が同じ景色を見て走れるような本物のビジョンを共に創り上げましょう。
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