新しい事業やプロダクトを立ち上げる際、「まずは売れるサービス名をつけよう」と考える人と、「愛されるブランド名を作ろう」と考える人がいます。
しかし、マーケティングの観点において「サービス」と「ブランド」は切り離して考えるものではありません。単なる便利な「サービス」にとどまるか、あるいはSUUMO(スーモ)のように顧客の脳内を独占する「ブランド」へと昇華できるか。その違いは、ネーミングの段階で「ブランド観点(世界観とスタンス)」が組み込まれているかどうかにかかっています。
今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・藤井にインタビューを実施。ただの商品やサービスを、熱狂的なファンを生む「ブランド」へと引き上げるためのネーミングの思考法について話を聞きました。
サービスを「ブランド」に昇華させる視点とは
AAII編集部: サービス名とブランド名では、ネーミングの作り方は違うのでしょうか。
藤井: 基本的には全く同じです。というよりも「すべてのサービスはブランドになるべきである」というのが私たちの根底にある考え方です。
たとえば「SUUMO」は、家を探すための便利な「サービス」ですが、同時に誰もが知る強固な「ブランド」ですよね。ただのサービス名であれば「Web不動産検索システム」といった機能の説明で終わってしまいますが、そこにブランド観点が入ることで、顧客の心に定着する固有名詞へと進化します。
AAII編集部: 機能を提供するだけでなく、ブランドとしての観点が必要だと。
藤井: はい。サービス名の段階では「この機能であなたの課題を解決します」という実利(ベネフィット)を約束します。しかし、それだけでは競合に真似された時に価格競争に巻き込まれます。
そこから一歩踏み込み、「私たちは社会に対してこういうスタンスで存在します」という独自の姿勢や世界観を名前に宿す。このブランド観点が加わって初めて、顧客は「機能が便利だから」だけでなく「ここの思想が好きだから」という理由で、長く使い続けてくれるようになるのです。
「おしゃれな外国語」がポエムに終わる理由
AAII編集部: ブランドとしての世界観を出そうとすると、フランス語やイタリア語などの「おしゃれな外国語」をつけたくなる人は多いと思います。
藤井: アパレルや飲食、あるいはD2Cの立ち上げで最も多い罠がそれです。自分たちのプロダクトを洗練されたものに見せたいという気持ちから、辞書を引いて見つけた「光」や「絆」を意味する外国語をそのまま名前にしてしまうケースです。
しかし、ターゲット顧客がその言葉の意味を知らなければ、それはただの「発音しにくいアルファベットの羅列」に過ぎません。
AAII編集部: 意味が伝わらなければ、スタンスに共感しようがないですね。
藤井: その通りです。さらに致命的なのは、読めない・綴りがわからない名前は、スマホで指名検索することができず、SNSでシェアすることもできないという「認知負荷」の壁です。
「なんとなくおしゃれだから」という個人のセンスや雰囲気だけで決めた名前は、顧客の感情を動かすことも、ビジネスの数字を作ることもできない、ただの独りよがりなポエムになってしまいます。
外国語が「最強のストーリー」に化ける唯一の条件
AAII編集部: では、外国語をブランド名に使うのは絶対に避けるべきなのでしょうか。
藤井: いえ、明確な例外があります。それは「創業者の強烈なアイデンティティ」と「事業の根幹となるプロセス」が、その外国語の意味と完全にリンクしている場合です。この条件を満たした時、外国語は薄っぺらなポエムから「最強のストーリー」へと化けます。
AAII編集部: どういうことでしょうか。
藤井: たとえば、元ドレスプランナーが立ち上げた、ドレス選びから入るトータルプロデュースのウエディング事業があったとします。このブランド名に「一枚の布」や「ベール」を意味するフィンランド語をつけたとしましょう。
AAII編集部: なるほど。響きはおしゃれですね。
藤井: 重要なのは響きではなく、その裏にあるスタンスです。顧客に対して「ウエディングの始まりは、一枚の布(ドレス)から紡いでいくものです」と語った時、そこには元ドレスプランナーという圧倒的な説得力と、事業のコアバリューが完全に一致したストーリーが生まれます。
AAII編集部: 「なんとなく見つけた光や絆」というのとは、言葉の重みが全く違いますね。
藤井: はい。パッと見で意味を知らない顧客も、初回接客でその「由来」を聞いた瞬間に深く納得し、ブランドの世界観へ一気に引き込まれます。
自分たちのアイデンティティ(DNA)から抽出された必然性のある言葉であれば、たとえそれが外国語であっても、顧客の感情を動かす立派な武器になるのです。
コンセプトという「軸」が、名前の強度を決める
AAII編集部: センスに頼らず、また独りよがりにならない強いブランド名を作るには何から始めるべきでしょうか。
藤井: 名前を考える前に、まずは事業の「コンセプト」を徹底的に言語化することです。「誰のために」「どんな価値を」「どんなトーン&マナー(世界観)で」提供するのか。このコンセプトという太い軸がなければ、どんな言葉を選んでも薄っぺらくなります。
AAII編集部: コンセプトがあって初めて、ネーミングが活きるのですね。
藤井: はい。コンセプトが明確になれば、「おしゃれなフランス語」ではなく「あえて無骨な漢字一文字」の方が自分たちの事業スタンスを体現できるかもしれない、あるいは「一枚の布を意味するフィンランド語」こそがアイデンティティを最も表せる、という明確な判断基準が生まれます。
ブランド名の強度は、その背後にあるコンセプトの深さに比例します。私たちプロがネーミングを行う際も、いきなり名前のアイデア出しから始めることは絶対にありません。まずは経営者の脳内にある熱量をヒアリングし、ブランドのコンセプトをソリッドな言葉で定義し直す上流工程からスタートします。
100案の検証で「やらないこと」を決め、愛着を確信に変える
AAII編集部: コンセプトが決まった後は、どのように名前を決めていくのでしょうか。
藤井: ここからがAAIIの真骨頂である「50〜100案」の検証プロセスです。定義したコンセプトを軸にしながら、直球の言葉、メタファー(暗喩)、少し視点をズラした造語など、ありとあらゆる方向性のアイデアをテーブルに並べます。
そして、経営者と一緒に「この言葉は私たちのスタンスに対して軽すぎる」「この響きはターゲットの世界観と合わない」と、自社が「やらないこと」を泥臭く一つずつ潰していきます。
AAII編集部: 膨大な数を出すからこそ、本当にふさわしい言葉が残るのですね。
藤井: その通りです。そして、ネーミングにおいて最も大切な「経営者自身がその名前を心底愛せるか」という感情のジャッジも、この比較検証のプロセスがあるからこそ確信に変わります。
他をすべて切り捨てて選び抜いた「これしかない」という1案だからこそ、経営者はその名前に自信を持ち、熱狂的な想いを乗せて顧客に語り続けることができるのです。その熱量こそが、単なるサービスをブランドへと育て上げる最大の原動力になります。
最後に:名前は「タグライン」と共に育てていくもの
AAII編集部: 最後に、これから事業やブランドを立ち上げる方へメッセージをお願いします。
藤井: ブランド名は、決めた瞬間が完成ではありません。その名前に込めたスタンスを、プロダクトの品質や日々の発信を通じて顧客に証明し続けることで、数年かけてようやく圧倒的な「ブランド」として育っていくものです。
そのためには、名前単体にすべてを背負わせるのではなく、ブランドの約束を端的な言葉にした「タグライン(キャッチコピー)」をセットで掲げ、顧客の認知を助けてあげることが重要です。
AAIIでは、50〜100案の徹底した検証を通じて、認知負荷を下げつつ経営者のアイデンティティを宿したネーミングと、世界観を伝えるタグラインの言語化を両立させます。センスや雰囲気に逃げず、顧客の心を打ち抜く「強い旗印」を共に創り上げましょう。
AAII ブランド開発支援:事業を勝たせる社名考案・ネーミング開発
「会社名」や「サービス名」を単なる言葉遊びで終わらせないために。
AAIIでは、ネーミングのご依頼に対して、まずは事業の軸となる「コンセプト」の言語化から伴走します。その上で50〜100案の徹底した検証プロセスを実施し、ターゲットの認知負荷を下げながら、作り手のアイデンティティ(世界観)を強烈に放つネーミングを考案します。
単なる機能を提供するサービスで終わらせず、長く愛される「ブランド」へと昇華させるためのタグライン開発、そして事業成長を見据えたマーケティング戦略まで一気通貫で伴走し、熱狂的なファンと指名検索を生み出します。
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