決算期や新しい事業年度のスタートに合わせて「中長期ビジョン」を発表する企業は多いです。しかし、経営陣が力強くプレゼンした資料を見て、現場の社員がワクワクするどころか「またノルマが増えた」と冷めた顔をしていることはないでしょうか。

それは、経営陣が「中長期ビジョン」と「中期経営計画(数値目標)」を混同してしまっているからです。

今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・フジヰにインタビューを実施。エクセルの数字の羅列から脱却し、社員が自ら走り出したくなる「未来の景色」としての中長期ビジョンの描き方について話を聞きました。

中長期ビジョンを「数字の羅列」にしてはいけない理由

AAII編集部: 多くの中長期ビジョンが、社員に響かないのはなぜでしょうか。

フジヰ: 最大の理由は、ビジョンの内容が「3年後に売上〇〇億円」「〇〇市場でシェアトップを獲得する」といった、ただの『数字の目標』になっているからです。

もちろん、経営として精緻な事業計画やKPI(重要業績評価指標)を引くことは絶対条件です。しかし、会社が儲かって業界トップになるという目標は、経営陣や株主にとっては喜ばしいことですが、現場の社員にとっては単なる「自分たちに課せられた重いノルマ」に過ぎません。

AAII編集部: 数字だけでは、現場のモチベーションに繋がらないのですね。

フジヰ: はい。人が圧倒的な熱量で動くためには、「その厳しい数字を達成し続けた先に、一体どんな素晴らしい世界(景色)が待っているのか」という『意味』が必要です。

エクセルで作られた無機質な数字を、誰もが頭の中に思い浮かべることができる「ワクワクする未来の景色」へと翻訳する。それが、中長期ビジョンの本当の役割なのです。

世の中の実例:トヨタ「Woven City」が示す究極の未来の景色

AAII編集部: 数字ではなく、未来の景色を見事に描いている世の中の実例はありますか。

フジヰ: 非常にスケールの大きな実例ですが、トヨタ自動車が発表した「Woven City(ウーブン・シティ)」の構想は、中長期ビジョンとしての究極の形と言えます。

自動車業界が100年に1度の大変革期を迎える中、彼らは単に「2030年までに電気自動車を〇〇万台売る」といった数字の目標だけをビジョンとして語りませんでした。

AAII編集部: そういえば、街を丸ごと作ると発表して世界を驚かせましたね。

フジヰ: そうです。彼らは自らを「自動車メーカーからモビリティカンパニーへモデルチェンジする」と宣言し、その未来の姿を証明するために「あらゆるモノやサービスが情報で繋がる実証都市(Woven City)」を作るという、誰もが視覚的にイメージできる圧倒的な『景色』を提示しました。

あの映像や構想を見た瞬間に、世界中のエンジニアやパートナー企業が「その未来づくりに参加したい」と熱狂しました。「何万台売るか」という数字では人は集まりませんが、「どんな未来の街を作るか」という景色には、人を強烈に惹きつける引力があるのです。

実例:緻密な「KPI」とクリエイティブな「景色」の両輪を回す

AAII編集部: フジヰさんご自身のプロジェクトにおいて、中長期ビジョンを数字から景色へと翻訳した実例を教えてください。

フジヰ: 私が立ち上げから伴走している、ウエディングプロデュース会社の事例をお話しします。

事業を成長させるためには、「3年後に年間〇〇組のプロデュースを受注する」「そのためにCPA(顧客獲得単価)をいくらに抑える」といった泥臭いKPIが絶対に必要です。私は前職である大手事業会社で、そうした緻密な数字のロジックが事業をどう牽引するかを叩き込まれてきました。

AAII編集部: 数字の重要性は痛いほど分かっているのですね。

フジヰ: ええ。しかし同時に、その厳しいKPIを追う現場のプランナーが「何のためにこの数字を追うのか」を見失わないためのインフラ(言葉)が必要です。

だからこそ、私たちは「年間〇〇組の受注」という数字の目標とは別に、中長期のビジョンとして「結婚式を、人生の目的を再確認する本質的なライフイベントへと昇華させ、業界の常識を塗り替える」という『景色』を言語化しました。

AAII編集部: 数字(現実)と景色(理想)の役割分担ですね。

フジヰ: その通りです。経営陣が引いた緻密な事業計画(数字)をベースにしながら、それをクリエイティブの力で「私たちが目指すのはこういう社会だ」という誇り高い言葉(景色)へと翻訳する。

数字だけでも人は疲弊し、ポエムだけでも組織は迷走します。ビジネスの論理と、人の心を動かすアートの両輪を回すことで初めて、中長期ビジョンは事業を前へ進める力になるのです。

AAII 企業理念・VMV開発支援:エクセルの計画を、組織を動かす熱へと翻訳する

あなたの中長期ビジョンは、ただの経営計画書になっていませんか?社員がそれを見た時、「これだけ売上を伸ばすのか、大変だな」と思うのか、「この未来を自分たちで創るんだ」と熱狂するのか。その差は、言葉の力にあります。

AAIIでは、ただ綺麗な言葉を並べるのではなく、事業の厳しいKPIやロジックを深く理解した上で言語化を行います。経営陣の頭の中にある数値的な目標を、アートディレクターとコピーライターの視点で、現場が自走したくなる「鮮やかな未来の景色」へと翻訳します。

数字の限界を突破し、組織全員が同じ景色を目指して駆け抜けるための本物の中長期ビジョンを、共に創り上げましょう。

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