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AAII編集部: 今回は、いざ起業を決意した人が直前に慌てないための「開業届の提出に必要なものリスト」について深掘りしていきます。マイナンバーカードは絶対にいるのか、控えはどうやって保管するのかなど、実務的な疑問をクリアにしていきます。お話を聞くのは、会社員時代に副業からスタートし、現在はクリエイティブディレクターとして個人事業を運営しているフジヰさんです。フジヰさん、よろしくお願いします。

フジヰ: よろしくお願いします。独立の熱量が高まり「よし、今日から事業を始めるぞ!」と意気込んで税務署の手続きをしようとした瞬間、「あれ、マイナンバーのコピーって必要だっけ?」「印鑑はどこに押すの?」と事務的な準備不足で手が止まってしまう人は非常に多いです。

起業初日の最も貴重なモチベーションを、お役所仕事の準備で削がれるのは非常にもったいないことです。現代の開業手続きは、正しいツールと数点の持ち物さえあれば、自宅から一歩も出ずに数分で完結します。今回は、一番推奨する「オンライン提出」を前提とした必須アイテムと、事業の命運を分ける「控え」の重要性について徹底解説します。

提出方法によって「必要なもの」は全く異なる

AAII編集部: まず前提として、開業届を提出する際に必要なものは、全員共通なのでしょうか。

フジヰ: いいえ、提出方法(オンライン、郵送、窓口持参)によって必要なものは完全に異なります。 昔ながらの「税務署の窓口へ持参する」場合や「郵送する」場合は、紙の開業届用紙、印鑑(現在は押印義務が廃止されたため任意ですが念のため)、マイナンバーカードの表裏のコピー、そして郵送なら切手を貼った返信用封筒など、アナログなアイテムが大量に必要になります。

しかし、以前の記事でもお伝えした通り、現代の起業家が窓口に行ったり郵送したりするのは時間と労力の完全な無駄です。今回は、最もスマートで一瞬で終わる「オンライン提出(e-Tax)」に絞って、本当に必要なものだけをリストアップします。

オンライン提出(e-Tax)に必要な3つの神器

AAII編集部: オンラインで提出する場合、手元に用意しておくべきものは何でしょうか。

フジヰ: 以下の3つだけです。これさえあれば、今から5分後に正式な個人事業主になることができます。

  1. マイナンバーカード(プラスチック製の写真付きカード) オンライン提出における絶対の必須アイテムです。紙のペラペラな「通知カード」では電子申告はできません。必ず写真付きのマイナンバーカード本体を用意してください。
  2. マイナンバーカード発行時に設定した「2つの暗証番号」 これが最も多くの人がつまずく最大のトラップです。カード本体があっても、暗証番号を忘れていると提出できません。 開業届をオンラインで送信する際、「利用者証明用電子証明書の暗証番号(数字4桁)」と、「署名用電子証明書の暗証番号(英数字6文字〜16文字)」の2種類の入力を求められます。特に後者の英数字のパスワードは、普段使う機会が少ないため忘れている人が続出します。もし忘れて5回間違えるとロックがかかり、役所に行って再設定する羽目になるので、事前に必ず手元のメモなどを確認しておいてください。
  3. NFC読み取り対応のスマートフォン(iPhone・Android) マイナンバーカードのICチップを読み取るためのリーダーとして、ご自身のスマホを使用します。最近のiPhone(iPhone 7以降)や、おサイフケータイ対応のAndroidであれば全く問題ありません。わざわざ家電量販店で数千円するICカードリーダーを買う必要は一切ありません。

書類の作成に必要な「完全無料のツール」

AAII編集部: 物理的なアイテムはスマホとマイナンバーカードだけでいいんですね。では、提出する書類のデータはどうやって作ればいいのでしょうか。

フジヰ: 書類のデータ作成に必要なのは「無料の開業届作成ツール」のアカウントだけです。 国税庁のサイトからPDFをダウンロードして入力するのは、専門用語の解読に時間がかかるため絶対にやめてください。以下の民間ツールを使えば、スマホから質問に答えるだけで完璧なデータが完成し、そのままオンライン送信まで完結します。

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どちらもメールアドレスひとつで無料で登録できます。具体的な職業欄の書き方や屋号の決め方については、以下のピラー記事で詳細に解説していますので、ツールを開きながらこちらを参照してください。

起業の第一歩!失敗しない開業届の書き方と提出のベストなタイミング

事業の命運を分ける「開業届の控え」の恐ろしい重要性

AAII編集部: 手続きに必要なものは非常にシンプルですね。提出が終わった後、手元に残しておくべきものはありますか。

フジヰ: ここからが今日一番伝えたい重要なポイントです。提出後に手に入る「開業届の控え」は、起業家にとって命の次に大切な証明書になります。

AAII編集部: 命の次に大切、というのは具体的にどういうことでしょうか。

フジヰ: 開業届の控えは、「私は国から正式に認められた個人事業主です」という唯一の公的な証明書だからです。ビジネスをスケールさせていく過程で、この控えがないと前に進めない決定的な場面が何度も訪れます。

代表的なのが「屋号付きの事業用銀行口座の開設」です。 現在、マネーロンダリング対策などの影響で、銀行の口座開設審査は異常なほど厳しくなっています。個人のフルネームではなく、「AAII フジヰ」のような屋号がついたビジネス用口座を作ろうとした場合、窓口で必ず「税務署の受付印が押された開業届の控え(または電子申請の受信通知)」の提示を求められます。これがないと、どれだけ熱弁しても口座は絶対に作れません。

他にも、日本政策金融公庫から起業の融資を受ける時、事業用のオフィスや店舗を賃貸契約する時、さらには小規模企業共済(個人事業主の退職金制度)に加入する時など、ビジネスの根幹に関わる契約のすべてで「控え」のコピーが要求されます。

オンライン提出なら「デジタル控え」が一生残る

AAII編集部: それほど重要な書類なら、絶対に紛失できないですね。

フジヰ: その通りです。だからこそ、紙で提出して受付印を押された「物理的な紙の控え」をクリアファイルに入れて保管するというアナログな方法は、紛失リスクが高すぎるため推奨しません。もし紙の控えをなくしてしまうと、税務署に保有個人情報開示請求という非常に面倒な手続きを行い、数週間から1ヶ月待たなければ再発行してもらえません。

オンライン(e-Tax)で提出した場合、この問題は完全に解決します。 提出が完了した瞬間に、e-Taxのシステム内(メッセージボックス)に「受信通知」というデジタルデータが届きます。この「送信した開業届のデータ」と「受信通知」の2つをセットで印刷したものが、法的に税務署の受付印と全く同じ効力を持つ公的な控えとして認められています。

デジタルデータなので、PDFとしてGoogleドライブやクラウドに保存しておけば、火事になろうがパソコンが壊れようが、一生紛失することはありません。銀行の審査に出す時も、そのPDFを家のプリンターで印刷して持っていくだけで完璧に通用します。

絶対に忘れてはいけないもう一つの必須書類「青色申告承認申請書」

AAII編集部: 必要なものと、控えの重要性がよく理解できました。これで開業の準備は完璧でしょうか。

フジヰ: もう一つだけ、絶対に忘れてはいけない書類があります。それは「青色申告承認申請書」です。 開業届単体を提出しても、事業の税金は1円も安くなりません。最大65万円の特別控除という最強の節税メリットを受けるためには、開業届と一緒にこの青色申告承認申請書を税務署に提出する必要があります。

先ほど紹介したfreeeやマネーフォワードの無料ツールを使えば、質問に答えていく過程で「青色申告で確定申告をする」という項目を選ぶだけで、システムが自動的にこの申請書も作成し、開業届とセットで税務署に送信してくれます。これを忘れると年間数十万円単位の税金を損することになるので、絶対にセットで提出してください。

青色申告の仕組みと、65万円控除がキャッシュフローに与える絶大なインパクトについては、以下の記事で徹底的に解説しています。必ず読んでおいてください。

知らないと大損。青色申告で最大65万円の特別控除を確実に受ける方法

提出完了=インフラ構築のスタート。クラウド会計ソフトの導入へ

AAII編集部: オンラインでサクッと提出を終えたら、次にやるべきアクションは何でしょうか。

フジヰ: 画面に「送信完了」の文字が出た瞬間、あなたの事業はスタートしました。その足で、事業の数字を管理するためのインフラである「クラウド会計ソフト」の契約に進んでください。

青色申告の65万円控除を確実に受けるためには、複式簿記という専門的なルールでの日々の帳簿づけが必須になります。手書きやエクセルでやろうとすると確実に破綻するので、独立初日に事業用の銀行口座とクレジットカードを作り、会計ソフトに連携させて自動仕訳の仕組みを作ってしまうのが鉄則です。

国内シェアトップ3の以下のソフトから、ご自身の事業スタイルに合ったものを今日中に導入してください。開業届作成ツールで使ったアカウントをそのまま引き継ぐことも可能です。

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それぞれのソフトの詳細な比較や、失敗しない初期設定のステップについては、以下のピラー記事で徹底解説しています。導入前に必ず確認してください。

確定申告の基本から提出まで。個人事業主が選ぶべき最強のクラウド会計ソフト

AAII編集部: マイナンバーカードの暗証番号の確認から、デジタル控えの重要性まで、実務に直結する非常に有益なノウハウでした。フジヰさん、今回もありがとうございました。

フジヰ: ありがとうございました。バックオフィスの手続きはテクノロジーを使って一瞬で終わらせ、事業の本質的な価値創造にすべてのリソースを集中させていきましょう。