創業時の単一事業から成長し、第二、第三の新規事業が立ち上がってきた時、多くの経営者が「既存のミッションが、新しい事業の文脈と合わなくなってきた」という悩みに直面します。
会社全体を表す「コーポレートミッション」と、個別の事業を表す「事業ミッション」。この2つを混同したまま組織を拡大すると、各事業部のベクトルがバラバラになり、会社としてのアイデンティティが崩壊してしまいます。
今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・フジヰにインタビューを実施。事業が多角化するフェーズにおいて、組織を一つに束ねつつ各事業の刃を研ぎ澄ます「言葉の階層(構造)」の作り方について話を聞きました。
事業が多角化した時、一つのミッションでは限界が来る
AAII編集部: 会社が成長し、複数の事業を持つようになると、既存のミッションが機能しなくなるのはなぜでしょうか。
フジヰ: ミッションとは本来、「特定の社会課題(敵)」に対して、「自分たちがどう解決するか(武器)」を定義する極めて鋭利な言葉だからです。
たとえば、創業時に「ITの力で飲食業界の非効率をなくす」という素晴らしいミッションを掲げたとします。しかし数年後、新しく「アパレル向けの物流事業」を立ち上げることになった場合、既存のミッションでは全く意味が通じません。
AAII編集部: 全く別の課題を解決する事業だからですね。
フジヰ: はい。そこで無理に「ITの力で様々な業界を効率化する」とミッションを書き換えてしまうと、今度は言葉が丸くなりすぎて、飲食事業の現場からも、物流事業の現場からも熱量が失われてしまいます。
事業が多角化した時には、すべてを一つの言葉で無理やり括ろうとするのではなく、会社全体を覆う「コーポレートミッション」と、現場の戦術となる「事業ミッション」という『言葉の階層』を明確に分ける必要があるのです。
世の中の実例:アルファベット(Google)が組織を分けた理由
AAII編集部: コーポレートと事業でミッションを切り分けている、世の中の分かりやすい事例はありますか。
フジヰ: 非常に有名な実例が、Googleとその親会社であるAlphabet(アルファベット)の組織構造です。
Googleのミッションは「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」です。しかし彼らは成長の過程で、自動運転車やヘルスケア、寿命の延長といった「情報整理」の枠に収まらない全く新しい領域の事業を次々と立ち上げました。
AAII編集部: 確かに、自動運転は情報の整理とは少し違いますね。
フジヰ: そこで彼らは、Googleのミッションを無理やり広げて丸くするのではなく、親会社として「Alphabet」を設立しました。
Alphabetは「野心的なプロジェクトを通じて、人類の大きな課題を解決する」という上位概念(コーポレートミッション)を持ち、その傘下に、検索事業(Google)や自動運転事業(Waymo)がそれぞれの尖った「事業ミッション」を持ってぶら下がる構造にしたのです。階層を分けたことで、各事業は自分のミッションだけに100%集中できるようになりました。
実例:多種多様なライフイベント事業を束ねる「上位概念」
AAII編集部: フジヰさんの実体験の中で、コーポレートと事業のミッションが美しく構造化されていた事例はありますか。
フジヰ: 私が以前所属していた、大手事業会社の構造がまさにその究極系と言えます。
その企業は、人材採用、結婚、住宅、旅行、飲食と、ゆりかごから墓場まで多種多様なライフイベントの事業を展開しています。それぞれが全く異なる市場で戦っているため、事業ごとに「縁を結ぶ発明者になろう(婚活事業)」といった、極めて現場に密着した泥臭く鋭利な「事業ミッションやバリュー」を持っています。
AAII編集部: 各事業部が、それぞれの領域に特化した武器を持っているのですね。
フジヰ: そうです。しかし、それだけではただの「バラバラの事業の寄せ集め」になってしまいます。そこで機能するのが、全事業を貫く強烈な「コーポレートミッション(あるいはコーポレートメッセージ)」です。
彼らは、採用であれ結婚であれ住宅であれ、すべての事業の根底にあるのは「まだ世の中にない、新しい『出会い』を創出すること」、そして「一人ひとりが自分の心に従って、自由に人生の選択ができる社会(Follow Your Heart)を創ること」だと定義しています。
AAII編集部: 扱う商品は違っても、提供している本質的な価値は同じだということですね。
フジヰ: その通りです。現場の営業担当者は、日々の業務においては鋭利な「事業ミッション」を武器として戦います。しかし、ふと立ち止まった時や、グループ全体で集まった時には、自分たちが「一人ひとりの人生の選択肢を増やす」という巨大なコーポレートミッションに繋がっていることを実感できる。
この「抽象的で巨大なコーポレート」と「具体的で鋭利な事業」という2つの階層が完璧に設計されているからこそ、あれだけ多様な事業を展開しても、決してブランドの軸がブレないのです。
AAII 企業理念・VMV開発支援:成長フェーズに合わせた言葉の「構造」を設計する
新規事業が立ち上がり、組織が多角化し始めた時が、企業理念を見直す最大のタイミングです。昔のミッションのまま無理やり新しい事業を走らせたり、逆にすべてを丸め込んだ退屈なスローガンを作ってしまえば、現場の求心力は一気に失われます。
AAIIでは、ただ一つのコピーを書いて終わることはありません。あなたの会社が今、どの成長フェーズにあり、どのような組織構造を持っているのかをビジネスの視点で徹底的に分析します。
そして、グループ全体を束ねる巨大な「コーポレートミッション」と、現場の最前線で競合に打ち勝つための鋭利な「事業ミッション」という、機能する言葉の階層(アーキテクチャ)を設計します。
事業の多様性を力に変え、組織全体を圧倒的なスケールで前進させるための言葉の構造を、共に創り上げましょう。
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