アパレルやアクセサリー、あるいは独自のプロダクトを販売するD2Cブランドを立ち上げる際、立ち上げメンバーの熱量は非常に高く、「絶対にクールで愛されるブランドにするぞ」と意気込んでネーミング会議に臨むはずです。
しかし、こと「ファッション・ライフスタイル領域」のネーミングにおいて、多くの担当者が無意識のうちに「売れないブランド名」の罠に自ら足を踏み入れています。その代表格が、安易な「おしゃれな外国語」と「自分の名前(デザイナー名)」の採用です。
今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・藤井にインタビューを実施。アパレルやD2Cブランドの立ち上げでやりがちなネーミングの失敗と、そこから抜け出して「指名検索されるブランド」を作るための思考法について話を聞きました。
罠1:検索もタグ付けもされない「おしゃれなフランス語」
AAII編集部: アパレルやD2Cブランドの立ち上げにおいて、最も多いネーミングの失敗は何でしょうか。
藤井: 圧倒的に多いのが、辞書で調べた「おしゃれなフランス語やイタリア語」をそのままブランド名にしてしまうケースです。たとえば「永遠」を意味するフランス語の「Éternité(エテルニテ)」といった名前ですね。
作り手からすると、響きも美しく、ロゴにした時の字面も洗練されているため、一見するとブランドの世界観が作れたように錯覚してしまいます。
AAII編集部: 確かに、服のタグについているとかっこよく見えます。何が問題なのでしょうか。
藤井: 致命的な問題が二つあります。一つ目は、これまでの記事でも何度もお伝えしている「認知負荷」の極端な高さです。
現代のブランド戦略において、InstagramなどのSNSでの「タグ付け」や、スマホでの「指名検索」は生命線です。しかし、フランス語の難しいスペルや、特殊な記号(アクサンなど)が入った名前は、顧客がスマホで正確に打ち込むことができません。「なんて読むかわからない」「検索の仕方がわからない」名前は、デジタル空間において存在しないのと同じなのです。
コンセプトなき外国語は「自己満足のポエム」である
AAII編集部: 読めない・打てない名前は、SNS時代において致命傷になるのですね。
藤井: はい。そしてもう一つの問題は、その外国語が「顧客にとって何の意味も持たない」ということです。
前回の記事で紹介したLiiNA(リーナ)のように、創業者の強烈なDNAや事業プロセスと完全にリンクした必然性のある外国語であれば、それは最強のストーリーになります。
しかし、ただ「服の雰囲気に合いそうだから」「おしゃれな響きだから」という理由だけで選ばれた外国語には、ブランドとしての「スタンス(やらないこと)」や「コンセプト」が一切宿っていません。それはブランド名ではなく、ただの自己満足のポエムです。顧客はポエムにお金を払うことはありません。
罠2:「自分の名前」をブランドにするなら、相当の覚悟と力技が必要
AAII編集部: 外国語以外に、よくある罠はありますか。
藤井: 「自分の名前(デザイナー名や創業者名)」をそのままブランド名にするケースです。ファッション業界ではこれを「エポニム」と呼びますが、現代の新規立ち上げにおいて、これも非常に難易度が高く危険な選択です。
AAII編集部: シャネルやディオールのように、自分の名前を冠するブランドは多い気がしますが。現代の気鋭のブランドでも、デザイナー名で出しているところは割とありますよね。
藤井: はい、確かに存在します。しかし、それに憧れて安易に真似をするのは危険です。誰もが知る歴史的ハイブランドは、何十年、何百年という途方もない時間と莫大な予算をかけて「その名前=最高級の価値」という概念を刷り込んできました。
現代の気鋭のブランドがエポニムで成功している裏にも、「自分の名前と心中する」という異常なまでの覚悟が隠されています。まだ何者でもない個人の名前をブランド名にしても、初めてそれを見た顧客には「どんなスタンスの、どんな価値を提供してくれる服なのか」が全く伝わりません。
AAII編集部: 名前そのものに、機能やコンセプトを伝える力がないのですね。
藤井: その通りです。よほどすでに個人としての知名度(インフルエンサーとしての強力なフォロワーなど)がある場合を除き、無名の状態から自分の名前でマインドシェア(第一想起)を獲得するには、とてつもないイバラの道を進むことになります。
しかし、もし経営者やデザイナーに「どうしても自分の名前を冠したい、そのイバラの道を進む覚悟がある」という強烈な意志があるのなら、私たちはそれを頭ごなしに否定はしません。
AAII編集部: 覚悟があれば、自分の名前でも勝機はあるということですか。
藤井: はい。ただし、名前単体で勝負するのは不可能です。名前でコンセプトが伝わらない分、それを補うための圧倒的な「ビジュアライズ(ロゴや写真の世界観作り)」と、世の中に認知を広げるための徹底した「マーケティングの力技」が必要になります。
私たちAAIIはネーミングだけでなく、アートディレクションやマーケティングの総合力を持っています。経営者に覚悟があるなら、私たちはデザインと戦略という力技を駆使して、その「個人の名前」を世の中に広く浸透させ、意味を持たせるプロセスまでを丸ごと引き受けます。
表層の「かっこよさ」を捨て、泥臭く100案を検証する
AAII編集部: では、アパレルやD2Cのブランド名はどのように決めるべきなのでしょうか。
藤井: まずは「かっこいい外国語」や「自分の名前」といった表層的なかっこよさを一旦捨ててください(あるいは、自分の名前で行くという圧倒的な覚悟を決めてください)。そして、前回の記事でお話しした通り、自分たちのブランドの「コンセプト(誰に、どんな価値を、どんなスタンスで提供し、何をやらないか)」を泥臭く言語化することです。
たとえば「毎日ガシガシ洗える、究極の日常着」というコンセプトであれば、読めないフランス語よりも、あえて親しみやすく認知負荷の低い「ひらがな」や「直球のカタカナ」の方が、ブランドのスタンスを正確に体現できるはずです。
AAII編集部: コンセプトという軸をもとに、最適なトーン&マナーを探るのですね。
藤井: はい。そのためにAAIIでは、50〜100案という膨大な数のネーミングアイデアを出し、検証します。「この英語はかっこいいけれど、うちのターゲット層にはタグ付けしにくいから捨てる」「この日本語は親しみやすいけれど、価格帯の高級感と合わないからやめる」。
この泥臭い検証プロセスを通じて初めて、SNS時代に確実に検索され、かつブランドの世界観を損なわない「最強の最適解」を見つけることができるのです。
最後に:着てくれる人の「検索窓」を想像せよ
AAII編集部: 最後に、アパレルやD2Cブランドの立ち上げでネーミングに悩んでいる方へメッセージをお願いします。
藤井: 服やプロダクトへの愛着が強ければ強いほど、どうしても自分たちが気持ちよくなる「かっこいい名前」をつけたくなるものです。しかし、その名前をスマホで検索し、SNSでシェアし、最終的にお金を払ってくれるのは「顧客」です。
顧客がその名前をどう読み、どう打ち込むのか。その具体的な行動を想像できない名前は、ビジネスをスケールさせる武器にはなりません。
AAIIでは、アパレル・D2C領域においても、単なる雰囲気やポエムに逃げないロジカルなネーミング開発を行います。100案の徹底検証で認知負荷を極限まで下げ、あなたの熱いコンセプトを「指名検索される強いブランド名」へと昇華させましょう。
AAII ブランド開発支援:事業を勝たせる社名考案・ネーミング開発
「ブランド名」を単なる言葉遊びやポエムで終わらせないために。
AAIIでは、いきなりネーミングを提案することはありません。まずは事業の軸となる「コンセプト(誰に、どんな価値を、どんなスタンスで提供するか)」の言語化から徹底的に伴走します。
ブレないコンセプトという評価基準を作った上で、50〜100案の徹底した検証プロセスを実施し、SNSでのシェアしやすさ(認知負荷の低さ)と、作り手の世界観を強烈に放つネーミングを両立させます。
自分の名前(エポニム)で勝負する覚悟のある方には、圧倒的なビジュアル開発とマーケティングの力技で市場に浸透させるサポートも可能です。単なるモノ売りで終わらせず、長く愛される「ブランド」へと昇華させる戦略まで一気通貫で伴走いたします。
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