新しいブランドや事業を立ち上げる際、多くの人が真っ先に「どんな名前にしようか」と、ホワイトボードに単語を書き出し始めます。
しかし、ブランドづくりの現場において、いきなり名前のアイデア出しから始めるのは最もやってはいけない悪手です。なぜなら、そのブランドが「誰に、どんな価値を、どんなスタンスで提供するのか」という根幹のコンセプトが決まっていなければ、出てきた名前の良し悪しを判断する基準が存在しないからです。
今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・藤井にインタビューを実施。名前という「表層」を決める前に絶対にやらなければならない、ブランドの「コンセプト(軸)」の作り方について話を聞きました。
いきなり名前を考えると「好き嫌い」で決まる
AAII編集部: ブランドを立ち上げる際、すぐに名前を考え始めてはいけないのでしょうか。
藤井: 絶対にNGです。コンセプトという「評価基準」がない状態で名前を出し合うと、最終的な決定打が社長や担当者の「なんとなく響きが好き」「かっこいい気がする」という個人のセンスに依存してしまいます。
好き嫌いで決めた名前には、事業としての必然性がありません。そのため、いざロゴを作ったりWebサイトをデザインしたりする段階になって、「やっぱりなんか違う気がする」「ターゲットに刺さっていない気がする」と迷走が始まり、プロジェクト全体が手戻りしてしまうのです。
AAII編集部: 評価基準がないから、迷子になってしまうのですね。
藤井: はい。ブランド名というのは、事業の熱量やスタンスを入れる「器(うつわ)」です。中に入れる水(コンセプト)がどんな色で、どれくらいの温度なのかが決まっていないのに、先に器の形だけを決めようとするから失敗するのです。
コンセプトとは「やらないことの定義」である
AAII編集部: では、ブランドのコンセプトとは具体的に何を言語化すれば良いのでしょうか。
藤井: 「誰の、どんな課題を、自分たちならではのどんな強み(DNA)で解決し、社会に対してどんな姿勢を示すか」。これを一言で言い表せるソリッドな言葉の芯を作ることです。
そしてコンセプト作りにおいて最も重要なのは、「自分たちは何者であり、何者ではないのか」という「やらないこと」を明確に定義することにあります。
AAII編集部: やらないことを決める、ですか。
藤井: はい。たとえば「すべての人に愛される、安くて便利なブランド」というのはコンセプトではありません。それはただの欲張りです。
「私たちは効率化を追わない。だから大量生産は絶対にやらない。その代わり、一生モノの価値だけを提供する」。このように、自ら退路を断つような強いスタンス(やらないことの定義)があって初めて、それは顧客の心を刺す鋭いコンセプトになります。
実例:私たちが支援する「LiiNA」はいかにして名前を決めたか
AAII編集部: コンセプトから名前が生まれた具体的な事例はありますか。
藤井: 私たちがブランド開発からマーケティングまでトータルでサポートしている、ウエディングプロデュース会社の『LiiNA(リーナ)』という素晴らしい事例があります。
LiiNAの代表は、元ドレスプランナーという強烈なアイデンティティ(DNA)を持っていました。そこで私たちは、いきなり名前を考えるのではなく、彼女の経歴と事業のコアバリューを徹底的に掘り下げ、一つのコンセプトを言語化しました。
AAII編集部: どのようなコンセプトでしょうか。
藤井: 「ウエディングの始まりは、一枚の布(ドレス)から紡いでいくもの」。これがLiiNAのコンセプトであり、絶対にブレない軸です。ただの式場手配ではなく、ドレス選びから入るトータルプロデュースであるという事業の強みを、この一言に込めました。
この強烈な軸が決まったことで、初めてネーミングの方向性が定まりました。ドレス、紡ぐ、編む、といったアイデアを検証する中で、フィンランド語で「布・リネン・ベールのような薄い布」を意味する「LiiNA」という言葉が選ばれたのです。
AAII編集部: 前回の記事で仰っていた「外国語が必然性を持つ瞬間」ですね。
藤井: その通りです。もしコンセプトがないまま「フィンランド語でおしゃれだから」と名付けていたら、それは薄っぺらなポエムで終わっていたでしょう。
しかし、「一枚の布から紡ぐ」という確固たるコンセプトと、元ドレスプランナーというDNAが裏側にあるからこそ、LiiNAという名前は顧客の心を動かす最強のストーリーとなり、ブランドを牽引する旗印になったのです。
コンセプトという「定規」で100案を測る
AAII編集部: コンセプトが決まれば、名前選びで迷うことはなくなるのでしょうか。
藤井: はい。コンセプトという絶対的な「定規」ができるからです。
AAIIでは、ネーミングの際に50〜100案という膨大なアイデアを出しますが、コンセプトがあれば「この言葉はかっこいいけれど、うちの『一枚の布から紡ぐ』というスタンスとは違う」と、感情ではなく論理で名前を切り捨てることができます。
100のアイデアを、1つの定規で測り続ける。この泥臭い検証プロセスを経るからこそ、経営者は「これしかない」という確信を持ってブランド名を決定し、愛着を持って事業を推進できるのです。
最後に:名前はコンセプトの「翻訳」に過ぎない
AAII編集部: 最後に、これからブランド名を考えようとしている方へメッセージをお願いします。
藤井: ブランド名は、決してゼロからひらめくものではありません。あなたの中にある強烈な想いや、事業のコンセプトを、顧客に伝わりやすい短い言葉へと「翻訳」した結果に過ぎないのです。
名前が思いつかないと悩んでいるなら、一旦ペンを置き、自分たちのコンセプト(誰に、何を約束し、何をやらないか)を言語化することに時間を割いてください。
AAIIでは、経営者の脳内にある想いをヒアリングし、事業の軸となるコンセプトの言語化から伴走します。そして、そのブレない軸をもとに50〜100案のネーミング検証を行い、ただのサービスを愛される「ブランド」へと昇華させる最強の言語化をご提供します。
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「会社名」や「ブランド名」を単なる言葉遊びで終わらせないために。
AAIIでは、いきなりネーミングを提案することはありません。まずは事業の軸となる「コンセプト(誰に、どんな価値を、どんなスタンスで提供するか)」の言語化から徹底的に伴走します。
ブレないコンセプトという評価基準を作った上で、50〜100案の徹底した検証プロセスを実施し、作り手のアイデンティティと世界観を強烈に放つネーミングを考案します。
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