会社のWebサイトや採用ピッチ資料を作る際、「自社のミッションをどう書くべきか」と悩む方は多いでしょう。その第一歩として、そもそも「ミッション」という言葉の意味をネットで検索してみた経験がある方も少なくないはずです。
しかし、辞書に書いてある直訳をそのまま事業に当てはめても、人の心を動かす言葉にはなりません。今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・フジヰにインタビューを実施。ビジネスにおける「ミッションの本当の意味」と、それを単なるお飾りではなく、社会に対する強いメッセージへと昇華させるための思考法について話を聞きました。
辞書的な「意味」を調べても、自社のミッションは作れない
AAII編集部: 「ミッション(Mission)」という言葉の意味を調べると、多くの場合は「使命」「任務」「役割」といった日本語が出てきます。ビジネスにおいては、これをどう解釈すればよいのでしょうか。
フジヰ: おっしゃる通り、直訳すれば「使命」や「果たすべき役割」です。しかし、多くの企業が陥ってしまう罠は、この「役割」という言葉を「自分たちの業務内容の説明」だと狭く解釈してしまうことです。
AAII編集部: 業務内容の説明、とは具体的にどういうことでしょうか。
フジヰ: たとえば、不動産の仲介会社であれば「最適な住まいを提案し、お客様の生活を豊かにする」、ITシステム開発の会社であれば「最新のテクノロジーで、企業の課題を解決する」といった具合です。これらは確かに「役割(=やっていること)」ではありますが、企業を牽引するミッションとしては弱すぎます。なぜなら、同じ業界の会社ならどこでも言える無難な説明文になってしまっているからです。
辞書的な意味だけをなぞって言葉を作ろうとすると、このように「誰も反対しないけれど、誰の心も動かさない」退屈な文章が出来上がってしまいます。
ミッションの本当の意味は「社会への強烈な問いと約束」
AAII編集部: では、ビジネスにおけるミッションの「本当の意味」とは何なのでしょうか。
フジヰ: ミッションの本当の意味は、「今の社会の状況に対して、自分たちが事業を通じて何を変えるのか」という『社会への強烈な問いと約束』です。
ただの業務説明ではなく、今の世の中のシステムや常識の何が歪んでいて、自分たちは何に憤りを感じているのか。そして、その歪みを正すために、私たちはこういう使命を全うするんだ、という「ベクトル」が明確に示されていなければなりません。
AAII編集部: 社会の課題に対するベクトル、ですね。わかりやすい事例はありますか。
フジヰ: ファーストリテイリング(ユニクロ)のミッションを見てみましょう。彼らは「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」という言葉を掲げています。
もし彼らが辞書的な意味だけでミッションを作っていたら、「良質な衣料品を低価格で提供する」といった業務説明になっていたはずです。しかし、彼らはそうしなかった。「これまでの服の常識(一部の人だけがファッションを楽しめる、あるいは安い服は品質が悪いという固定観念)を打ち破り、世界中のあらゆる人の生活を豊かに変える」という社会に対する強烈な約束を言語化したのです。この圧倒的なスケール感と変革の意志があるからこそ、あれほどの巨大企業になっても組織の熱量が失われないのです。
なぜ今、企業に「意味のあるミッション」が求められているのか
AAII編集部: 昔に比べて、近年は特にスタートアップから大企業まで、ミッションの言語化に力を入れる企業が増えているように感じます。なぜ今、これほどまでに「意味のあるミッション」が求められているのでしょうか。
フジヰ: 理由は大きく2つあります。1つは「モノやサービスが飽和し、機能だけでは差別化できなくなったから」です。
昭和や平成の初期までは、より便利で、より高品質なものを安く作れば売れる時代でした。しかし今は、どの企業の製品も一定以上のクオリティがあり、機能面での明確な差がつきにくくなっています。そうなった時、顧客が商品を選ぶ基準、あるいは求職者が働く会社を選ぶ基準は「その会社が何を目指し、どんな社会を作ろうとしているのか」という『意味(ストーリー)』へとシフトします。共感できる意味を持たない企業は、価格競争に巻き込まれるしかなくなるのです。
AAII編集部: 機能的価値から、意味的価値へのシフトですね。もう1つの理由は何でしょうか。
フジヰ: 「トップダウンによる支配から、ステークホルダーとの『共創』へ時代が変化しているから」です。
かつてのような、経営者が絶対的な権力を持ち、社員がただ指示通りに動くという昭和的な労働の価値観は、もはや通用しません。今の時代に事業を数千億規模へとスケールさせていくためには、社員だけでなく、顧客やパートナー企業すらも巻き込み、共に事業を創っていく「共創」のスタンスが不可欠です。
そして、社内外の多様な人々を一つの船に乗せ、同じ方向へ向かわせるためには、「私たちはこの社会のこの古い価値観を倒すんだ」という、明確で熱を帯びた旗印(ミッション)が絶対に必要になります。だからこそ、経営者はミッションの言語化に真剣に向き合わざるを得ないのです。
経営者の熱量を「意味のある言葉」へ翻訳する技術
AAII編集部: 自社のミッションを、単なる業務説明から「意味のある強靭な言葉」に変えるためには、どうすればよいのでしょうか。
フジヰ: いきなり机の上でキャッチコピーを考えようとしないことです。
まずは、経営者自身の内側にある「原体験」や、今の業界に対する「憤り」を徹底的に掘り下げてください。「自分たちの事業の前に立ちはだかる、倒すべきラスボス(古い常識や社会の歪み)は一体何なのか?」という問いを立て、それを経営陣で徹底的に議論します。
その泥臭い感情と社会課題の接点が見つかって初めて、クリエイティブの出番になります。そこから先はプロの領域です。その熱量を、ただの荒々しい感情で終わらせるのではなく、社員の誇りとなり、日々の業務の明確な判断基準(やらないことの定義)となるように、詩的な美しさと論理性を兼ね備えた言葉へと翻訳していくのです。
AAII 企業理念・VMV開発支援:言葉の意味を再定義し、勝つ武器を創る
ミッションという言葉の意味をネットで検索し、他社のきれいな言葉を切り貼りしても、組織を動かす力は宿りません。ミッションの本当の意味とは、自社の事業がこの社会で果たすべき役割を定義し、未来へ向けた強烈な矢印を引くことです。
AAIIでは、辞書に載っているような無難な言葉や、実体のないポエムは一切作りません。経営者の頭の中にある熱量や、社会の古い価値観に対する憤りを徹底的にヒアリングし、事業を力強く推進するための「機能するミッション」へと翻訳します。
プロのアートディレクターとコピーライターの視点で、あなたの会社の存在意義を研ぎ澄まし、共創を生み出すための最強の旗印を共に創り上げましょう。
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