全社を束ねる壮大なコーポレートミッションが完成し、社長が声高にそれを発表した。しかし、営業部やマーケティング部、あるいは経理や開発などの各「組織(部署)」の現場に降りていくと、途端に「自分たちの普段の業務とは遠すぎる」と冷めた空気が流れてしまう。

こうした「全社」と「部門」の間に生じる熱量の断絶は、多くの企業が抱える根深い課題です。

今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・フジヰにインタビューを実施。巨大な全社理念を、各部署の日常業務の意味を変える「組織ミッション(部門ミッション)」へと翻訳し、会社全体を一つのベクトルに揃える技術について話を聞きました。

経理や開発チームに、全社ミッションは響かない

AAII編集部: 全社ミッションが、各部署の現場に浸透しないのはなぜでしょうか。

フジヰ: 全社ミッションは、会社全体が社会に対して果たすべき「巨大な役割」を定義するものです。そのため、どうしても視座が高くなります。

たとえば「世界中に新しいライフスタイルを提案する」という全社ミッションがあったとします。商品企画部や広報部なら、まだ自分ごととして捉えられるかもしれません。しかし、毎日ひたすらコードを書いている開発チームや、エクセルと睨み合っている経理チームからすれば、「新しいライフスタイルと言われても、自分の今のこの作業がどう繋がっているのか全く想像できない」というのが本音です。

AAII編集部: 部署によって、ミッションとの「距離感」が違うのですね。

フジヰ: はい。だからこそ、全社のミッションをそのまま各組織に丸投げするのではなく、その部署の機能に合わせて「自分たちのこの業務は、全社ミッションを実現するためのどの部分を担っているのか」を定義する『組織ミッション』が必要になるのです。

世の中の実例:NASAの清掃員が持っていた「完璧な組織ミッション」

AAII編集部: 全社の目的と、現場の分業が見事に結びついている世の中の実例はありますか。

フジヰ: 組織ミッションの重要性を語る上で、最も本質的で有名なエピソードがあります。1962年、アメリカのケネディ大統領がNASA(航空宇宙局)を訪問した時の話です。

大統領が、床掃除をしていた一人の清掃員に「あなたの仕事は何ですか?」と尋ねました。その清掃員は、「私は、人類を月に送る手伝いをしています(I’m helping put a man on the moon)」と答えたのです。

AAII編集部: ただ「掃除をしています」とは答えなかったのですね。

フジヰ: そうです。「人類を月に送る」というNASAの巨大な全社ミッションが、清掃員という一つの組織・役割において、「床を清潔に保つことで、技術者が最高のパフォーマンスを発揮できる環境を創り、それが月面着陸に繋がる」という『意味(組織ミッション)』にまで完璧に翻訳され、浸透していたということです。

経理であれ、システム開発であれ、掃除であれ、「自分のこの作業が、会社の巨大なミッションのどの歯車を回しているのか」を言葉で定義すること。これこそが組織ミッションの役割です。

実例:AI推進チームのミッションは「効率化」ではない

AAII編集部: フジヰさんご自身の実体験の中で、特定の部署やチームの「組織ミッション」を定義した事例を教えてください。

フジヰ: 私が現在、大手事業会社の中でリーダーを兼任している「生成AIクリエイティブ推進プロジェクトチーム」での実体験をお話ししましょう。

この会社は、非常に多岐にわたる事業を展開しており、全社としては「新しい出会いの創出」や「一人ひとりが自由に選択できる社会」といった巨大なミッションを掲げています。

AAII編集部: その中で、AIを推進するチームのミッションはどう定義されているのでしょうか。

フジヰ: 普通に考えれば、AIチームのミッションは「最新技術を使って、業務を効率化し、コストを削減する」といったものになりがちです。しかし、そんな「ただの効率化」という退屈なミッションでは、全社の掲げる「新しい出会いの創出」という熱量の高い目標と全く結びつきませんし、チームメンバーの誇りも生まれません。

そこで私は、自チームの組織ミッションを単なる技術導入ではなく、全社ミッションと接続する形で定義し直しました。

AAII編集部: どのように翻訳したのですか。

フジヰ: 「生成AIを使ってルーティン作業やコピー生成を自動化することで、人間のクリエイターが『本当に本質的で、人の心を揺さぶる企画(出会い)を考える時間』を最大化する」というミッションです。

つまり、私たちのチームの目的はAIを使うことではなく、「人間のクリエイティビティを拡張し、全社のミッションである『出会いの創出』を加速させること」なのです。こう定義することで、ただの「社内のシステム効率化担当」という裏方の意識から、「全社のクリエイティブの限界を突破させる最前線のチーム」へと、メンバーのマインドセットが劇的に変わります。

AAII流:機能する「組織ミッション」への翻訳ステップ

AAII編集部: 各部署で組織ミッションを作る際、どのような視点が必要でしょうか。

フジヰ: 以下のステップで、全社の言葉を現場の言葉へと「引き下ろす」作業を行います。

  1. 部署の「最終成果物」を再定義する 経理なら「正確な帳簿」、開発なら「バグのないシステム」といった機能的な成果物ではなく、それが全社ミッションにどう貢献しているのか(例:経営の迅速な意思決定を守る盾、など)を再定義します。
  2. 全社ミッションとの「接続詞」を見つける 「全社のミッションを実現する【ために】、我々の部署は〇〇を成し遂げる」という構文に当てはめ、論理的な飛躍がないかを確認します。
  3. 現場の日常用語(動詞)に変換する 高尚な横文字を捨て、その部署のメンバーが毎日使っている「泥臭い現場の言葉」を使ってコピーを研ぎ澄まします。

AAII 企業理念・VMV開発支援:すべての部署に、戦う「意味」を与える

どれほど素晴らしいコーポレートミッションを掲げても、それが現場の各部署の「毎日の業務」と結びついていなければ、組織は絶対に動きません。

AAIIでは、全社のVMVを策定して終わりにするのではなく、それが営業、開発、バックオフィスといった各組織の「現場の武器(組織ミッション)」として機能するまで、徹底的に言語化と翻訳の伴走を行います。

すべての部署が、自分たちの仕事に強烈な誇りと意味を持ち、一つの巨大なミッションに向かって自走し始める。そんな一枚岩の組織を共に創り上げましょう。

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