「社会に貢献する」という立派な全社理念が掲げられている一方で、営業の現場では「月末までに気合いで数字を作れ!」というノルマ至上主義の号令が飛んでいる。
このような「高尚な理念」と「泥臭い営業現場」の断絶は、多くの企業で見られる致命的な課題です。営業担当者は「理念なんかで飯は食えない」と冷めきり、組織は疲弊していきます。
今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・フジヰにインタビューを実施。美しく抽象的な全社のVMV(ビジョン・ミッション・バリュー)を、売上を創る最前線である「営業現場のアクション」へと翻訳する「営業理念」の作り方について話を聞きました。
理念が営業現場で「ただのきれいごと」になる理由
AAII編集部: 全社で素晴らしい理念を作っても、営業現場にはなかなか浸透しないという悩みをよく聞きます。なぜ断絶が起きてしまうのでしょうか。
フジヰ: 理由は非常にシンプルです。全社理念というものは、どうしても抽象度が高く「中長期的な理想」を語るものになります。しかし、営業現場が日々直面しているのは、「今月の売上目標(KPI)」と「目の前のお客様のシビアな要求」という、極めて現実的で短期的な数字の世界だからです。
AAII編集部: 見ている時間軸も世界も違うのですね。
フジヰ: はい。経営陣が「社会課題の解決を!」と叫んでも、営業マンからすれば「そんなことより、この案件をどうクロージングすればいいのか教えてくれ」というのが本音です。
この断絶を埋めるためには、全社理念をそのまま押し付けるのではなく、それを「自分たちの営業活動における具体的なスタンスと戦術」にまで引き下ろした『営業理念(営業ミッション・バリュー)』へと翻訳するプロセスが絶対に必要になります。
世の中の実例:キーエンスの理念は、最強の「営業マニュアル」である
AAII編集部: 全社の理念が、営業現場のアクションにまで完璧に落とし込まれている実例はありますか。
フジヰ: 日本企業において圧倒的な利益率を誇る「キーエンス」が、その究極の成功事例です。
彼らの企業理念の根幹には「最小の資本と人で、最大の付加価値を上げる」という考え方があります。普通ならここで終わってしまいがちですが、彼らはこの理念を「営業現場での絶対的な行動基準(営業理念)」へと見事に翻訳しています。
AAII編集部: 具体的にどう翻訳しているのでしょうか。
フジヰ: 「最大の付加価値を上げる」という理念を体現するために、キーエンスの営業は「単なるカタログ売り(御用聞き)」を絶対にしません。また、価値を下げる「値引き」も原則として行いません。
彼らの営業理念は、「顧客の潜在的な課題を発見し、コンサルティングを通じて解決策(付加価値)を提供する」という極めて明確なアクションにまで落とし込まれています。理念がただのポエムではなく、「値引きはしない」「課題解決の提案に時間を割く」という日々の営業戦術やKPIの基準として機能しているからこそ、あれほどの凄まじい業績を生み出し続けているのです。
実例:「売上」ではなく「課題解決」を問う組織文化
AAII編集部: フジヰさんの実体験の中で、高尚な理念が営業の泥臭いKPIと結びついていた事例を教えてください。
フジヰ: 私が以前所属していた大手事業会社は、まさに「理念と営業アクションの接続」において国内最高峰の仕組みを持った組織でした。
前回の記事でも触れた通り、彼らの根底には「新しい出会いの創出」や「一人ひとりが自由に人生の選択肢を持てる社会(Follow Your Heart)」という、非常に美しく壮大なコーポレートメッセージがあります。
AAII編集部: それをどうやって、泥臭い営業現場に落とし込んでいるのでしょうか。
フジヰ: 全社の「Follow Your Heart(心の声に従え)」という理念は、営業現場に降りてくると「圧倒的な当事者意識」や「お前はどうしたいんだ?」という、極めて厳しく生々しい営業バリュー(行動指針)へと翻訳されます。
現場の営業マンは、単に広告枠を売って「売上KPI」を達成しただけでは評価されません。「その提案は、本当にクライアントの本質的な課題(心の声)を解決しているのか?」「カスタマーにとって最高の出会いになっているのか?」を徹底的に問われます。
つまり、「数字(KPI)」と「理念(クライアントへの提供価値)」が完全にトレードオフではなく、一体化しているのです。全社の美しい理念が、営業現場で「絶対に逃げてはいけない泥臭い戦い方」として言語化されているからこそ、最強の営業組織が育つのです。
AAII流:機能する「営業理念」を創る3つのステップ
AAII編集部: 自社の営業部隊に理念を浸透させるには、どうすればよいでしょうか。
フジヰ: 全社理念をいきなり現場に丸投げするのをやめ、以下の3つのステップで「営業部としての翻訳作業」を行います。
- 営業としての「敵(やらないこと)」を決める 全社理念を実現するために、営業現場で「絶対にやってはいけない売り方(例:無理な押し売り、過度な値引き、目先の数字稼ぎ)」を明確に定義し、タブーとします。
- 「売上」以外の価値を言語化する 自分たちの営業活動は、単にモノを売る作業ではなく、顧客のどんな「痛み」を取り除き、どんな「未来」を提案する仕事なのかを、現場の言葉で再定義します。
- 理念を「KPIと評価」に直結させる どれだけ立派な営業理念を作っても、評価基準が「売上金額のみ」であれば現場は理念を無視します。「理念に沿った営業活動ができているか(プロセス)」を、しっかりと評価制度やKPIの設計に組み込むことが不可欠です。
AAII 企業理念・VMV開発支援:理念を「数字を創る武器」へ変換する
「理念が浸透しない」と嘆く前に、その理念が営業現場にとって「売上を創るための強力な武器」として翻訳されているかを確認してください。
AAIIでは、抽象的なポエムを作って終わることは絶対にありません。戦略部隊と連携して事業のシビアなKPIを追ってきたビジネスの視点と、人の心を動かすコピーライターの視点を掛け合わせ、全社理念を「営業現場が明日から戦うための具体的なアクション(営業理念)」へと翻訳します。
現場のノルマと全社の理想を一本の線で繋ぎ、圧倒的な熱量と数字を生み出す営業組織を共に創り上げましょう。
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