自社のミッション(果たすべき役割)を作ろうとした時、多くの企業が「言葉集め」の罠に陥ります。

経営陣やプロジェクトメンバーで集まり、「革新」「貢献」「グローバル」「笑顔」といった、辞書に載っているような前向きな単語をホワイトボードに書き出し、それらをパズルのようにつなぎ合わせて立派な文章を作る。しかし、そうして出来上がったミッションは、驚くほど現場の心に響きません。

今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・フジヰにインタビューを実施。「言葉をこねくり回す」表面的な作り方を脱却し、事業を牽引する強靭なミッションをゼロから削り出すプロセスについて話を聞きました。

ミッション作りは「言葉探し」ではなく「敵探し」から始まる

AAII編集部: ミッションを作ろうとすると、どうしても「いい言葉」を探してしまいます。何がいけないのでしょうか。

フジヰ: 「いい言葉」を探そうとする時点で、すでに間違った方向へ進んでいます。なぜなら、ミッションとは「自社を良く見せるためのキャッチコピー」ではなく、「自社がこの社会の何を打ち破るのかという『戦略(スタンス)』」だからです。

きれいな言葉からスタートすると、必ず「社会に貢献し、お客様に笑顔を届けます」といった、どの企業でも言える丸い言葉に行き着きます。強いミッションを作るための第一歩は、言葉を探すことではなく、「私たちが倒すべき敵(社会課題や古い常識)は何か」を見定めることから始まります。

世の中の実例:Airbnbが定めた「Belong Anywhere」というスタンス

AAII編集部: 「倒すべき敵」からミッションを作った世の中の成功事例はありますか。

フジヰ: 民泊サービスの世界的プラットフォームであるAirbnb(エアビーアンドビー)のミッションが非常に秀逸です。

彼らのミッションは「Belong Anywhere(世界中のどこにでも、居場所がある)」というものです。彼らは「安く泊まれる場所を提供する」とは言っていません。彼らが倒すべき敵として設定したのは、見知らぬ土地で感じる「よそ者感」や「孤独」、そして現地の文化から切り離された「画一的なホテル体験」です。

AAII編集部: 単なる宿泊業ではなく、孤独やよそ者感と戦っているのですね。

フジヰ: その通りです。その「敵」を明確にした上で、「私たちは、誰もが世界中どこにいても『自分の居場所だ』と感じられる社会を創る」というスタンス(ミッション)を宣言したのです。だからこそ、ホスト(貸す側)もゲスト(借りる側)も、単なる金銭のやり取りを超えて、彼らのプラットフォームに強烈な愛着と熱狂を抱くようになりました。

実例:複雑な専門用語を捨てて、本質を削り出す

AAII編集部: フジヰさんが実際のプロジェクトで、言葉集めの罠を回避してミッションを作った事例を教えてください。

フジヰ: 私が伴走した、大手都市開発コンサルティング企業のプロジェクトでの実体験です。

彼らは都市計画や建築、土木といった高度な専門家集団でした。そのため、ミッションを作ろうとすると、どうしても「サステナビリティ」「インフラの強靭化」「次世代の都市空間デザイン」といった、重たくて複雑な専門用語(いい言葉)をすべて詰め込もうとしてしまっていたのです。

AAII編集部: 専門性が高いほど、難しい言葉を使いたくなりますよね。

フジヰ: はい。しかし、要素を詰め込んだ長い文章は、現場の誰も暗唱できませんし、行動の基準にもなりません。そこで私は、ホワイトボードに並んだ専門用語を一度すべて消し、「要するに、皆さんの技術を使って、世の中をどうしたいんですか?」と、極限まで本質を問い詰めました。

AAII編集部: 何が残ったのでしょうか。

フジヰ: 議論の末に残ったのは、「結局のところ、自分たちは『いいまち』を創りたいんだ」という、泥臭くも純粋な想いでした。

だからこそ、私たちはすべての専門用語を捨て、彼らのミッションを「いいまちつくろう」という、小学生でも一瞬で理解できる圧倒的にシンプルな言葉に削り出しました。辞書から借りてきた難しい言葉ではなく、自分たちの腹の底から出た本質の言葉だからこそ、多様な専門家たちを一つに束ねる最強のインフラになったのです。

AAII流:機能するミッションを削り出す「3つのステップ」

AAII編集部: 自社でミッションを作る際、具体的にどのようなステップを踏めばよいのでしょうか。

フジヰ: AAIIの言語化パッケージでは、以下の3つのステップでミッションを構築します。

  1. アンチテーゼの発見(敵を定める) 自社が属する業界の「当たり前」の中で、何に憤りを感じているのか。何を「不条理」だと考えているのかを徹底的に言語化します。
  2. スタンスの定義(自分たちの立ち位置を決める) その不条理に対して、自分たちは「どういうやり方で、誰を救うのか」。絶対にやらないことは何かを明確にし、企業としてのエッジ(個性)を立てます。
  3. クリエイティブ変換(動詞へと翻訳する) 定まったスタンスを、プロのコピーライターの技術で「短く、強く、直感的に動ける言葉(動詞)」へと研ぎ澄まします。

このプロセスを経ることで、ミッションは「壁の飾り」から、組織を動かし事業を勝たせる「武器」へと変わります。

AAII 企業理念・VMV開発支援:言葉集めを終わりにする

もし今、あなたの会社の経営陣が、会議室で「どの単語を組み合わせるか」という議論をしているなら、すぐにストップしてください。言葉遊びからは、現場を熱狂させるミッションは絶対に生まれません。

AAIIでは、きれいな言葉を納品するような仕事はしません。経営者の頭の中にある事業への強烈な想いや、業界に対する泥臭い葛藤を丸裸にし、そこから「本質的なスタンス」だけを抽出して強靭な言葉へと翻訳します。

借り物の言葉を捨て、あなたの会社にしか語れない、事業の原動力となる本物のミッションを共に創り上げましょう。

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