多くの日本企業には、創業時から大切にされてきた「経営理念」や、額縁に入れられた「社是・社訓」が存在します。しかし、時代の変化とともに、それらの言葉が現場の熱量と乖離し、単なる形式的なものになってしまっているケースも少なくありません。
一方で、スタートアップや成長企業が掲げる「VMV(ビジョン・ミッション・バリュー)」という言葉も定着してきました。果たして、従来の経営理念と現代のVMVは何が違うのでしょうか。
今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・フジヰにインタビューを実施。古い言葉を現代のビジネスで通用する「武器」へとアップデートし、組織を再び加速させるための言語化の技術について話を聞きました。
従来の「経営理念」と現代の「VMV」の決定的な違い
AAII編集部: 「経営理念」と「VMV」は、言葉こそ違えど同じものを指しているようにも思えます。具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
フジヰ: 一言で言えば、その言葉が「静止画(状態)」か「動画(アクション)」かという違いです。
従来の「経営理念」や「社是」は、企業の普遍的な精神や、創業者の人格を尊ぶといった、非常に高潔で静的な言葉が多いのが特徴です。いわば、北極星のように「そこにあるべき正しい姿」を示すものです。
対して、現代の「VMV」は、より動的で戦略的なツールとして設計されます。「自分たちは社会の何を、どう変えるのか(アクション)」を定義し、現場の社員が日々の意思決定に使える「判断基準」として機能させる。この「実務への接続性の強さ」こそが、VMVというフレームワークの最大の特徴です。
AAII編集部: 精神論から、実務のツールへの転換ということですね。
なぜ昭和の「社是」は現場で機能しなくなったのか
AAII編集部: かつては多くの企業を支えていた社是や社訓が、なぜ今の時代には機能しにくくなっているのでしょうか。
フジヰ: 理由は、言葉の「解像度」と「ベクトル」にあります。
昭和の時代は、右肩上がりの経済成長の中で「誠実」「努力」「和」といった、誰もが共通認識を持てる抽象的な言葉でも、組織を一つの方向に向かわせることができました。しかし、価値観が多様化し、ビジネスモデルの寿命も短くなった現代では、こうした抽象的な言葉だけでは、現場は「具体的にどう動けばいいのか」を判断できません。
AAII編集部: 「誠実」と言っても、人によって解釈が分かれてしまうのですね。
フジヰ: その通りです。また、多くの社是には「何を倒すべき敵(社会課題)とするか」という戦略的な視点が不足しています。今の時代、組織を動かすのは「きれいな理想」だけではなく、「自分たちの力でこの不条理を打ち破るんだ」という強いベクトルを伴った言葉です。
古くなった言葉をただ掲げ続けることは、組織の思考停止を招くリスクすらあります。だからこそ、創業時のDNAを継承しつつも、今の時代に合わせて「アップデート」し続ける必要があるのです。
古い言葉を「現代の武器」へと翻訳するプロセス
AAII編集部: では、長年大切にしてきた経営理念を、どうすれば「機能する言葉」にアップデートできるのでしょうか。
フジヰ: 大切なのは「捨てる」ことではなく「翻訳」することです。創業者が大切にしていた精神(DNA)を、現代の市場環境や社会課題に合わせて、新しい「意味」として定義し直す作業です。
私たちがプロジェクトに取り組む際は、まず創業時のエピソードや、当時の経営者が何に対して情熱を燃やしていたのかという「熱の源泉」を徹底的に掘り下げます。その上で、以下の3つの観点から言葉を磨き上げます。
- 戦略的意図の付与:単なる理想ではなく、「どの領域で、どう勝つのか」という意思を言葉に込める。
- アクションの明確化:現場の社員が、今日からすぐに使える動詞へと変換する。
- 社会課題との接続:その言葉を実現することが、今の世の中の何を変えるのかを明確にする。
このプロセスを経ることで、額縁の中の「飾り」だった言葉は、組織全員が共通の目的を持って戦うための「武器」へと生まれ変わります。
事例:伝統的な精神を「現代の挑戦」へと再定義する
AAII編集部: 実際にアップデートに成功した事例はありますか。
フジヰ: ある老舗のサービス企業の事例をお話しします。彼らには「お客様第一」という伝統的な理念がありましたが、現場ではそれが「お客様の言いなりになること」と誤解され、疲弊を招いていました。
私たちは、創業者が本来込めていた「お客様の人生をより良くする」という熱量を抽出し、それを「未来の当たり前を創り出すパートナーであれ」という、より能動的でクリエイティブなスタンスへとアップデートしました。
AAII編集部: 受け身の姿勢から、提案型の姿勢へとマインドセットが変わったのですね。
フジヰ: はい。言葉を変えたことで、現場からは「ただ要望に応えるだけでなく、プロとして新しい価値を提案しよう」という自発的な動きが生まれました。経営理念という古いエンジンを最新のVMVへと積み替えたことで、組織全体が再び力強く自走し始めたのです。
AAII 経営理念・VMV開発支援:DNAを継承し、未来を勝たせる
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AAIIでは、企業の歴史やDNAを深く理解した上で、アートディレクターとコピーライターの視点を融合させ、今の時代に組織を最も熱狂させ、事業を勝たせるための「強靭な言葉」を策定します。
創業時の熱量を、現代の戦略へと翻訳する。 飾りではない、事業を推進するための最強の武器を共に創り上げましょう。
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