組織が拡大するタイミングや、新しい事業フェーズに向かう際、ミッション(果たすべき役割・戦略)を新たに策定しようとする企業は多くあります。その際、「現場の社員も巻き込んで、みんなでワークショップをして決めよう」というアプローチをとるケースがよく見られます。

しかし、付箋を貼り合って民主的に作られた言葉が、結局は誰の心も打たない「丸くて退屈な言葉」になってしまうことは珍しくありません。

今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・フジヰにインタビューを実施。社内ワークショップが陥りがちな「全員合意の罠」と、強いミッションを策定するための正しいプロセスのあり方について話を聞きました。

ミッションを「多数決」で決めてはいけない理由

AAII編集部: ミッションを策定する際、社員全員でワークショップを行い、多数決や合意形成で言葉を決めるアプローチについてどう思われますか。

フジヰ: 社員の意見を聞くこと自体は非常に重要ですが、「最終的な言葉を多数決や全員合意で決める」というアプローチは、ほぼ間違いなく失敗します。

ミッションとは、企業が今の社会に対して「何を変えるのか」、そして「何をやらないのか」という『戦略』を言語化したものです。戦略である以上、そこには必ず「特定のターゲットに絞る」「ある事業領域は捨てる」といった、エッジの効いた決断が必要になります。

AAII編集部: 全員の合意を取ろうとすると、そのエッジが失われてしまうのでしょうか。

フジヰ: その通りです。20人の社員がいれば、20通りの想いがあります。「この言葉も入れたい」「その表現だと自分の部署の仕事が含まれていない気がする」と、全員が納得するまで言葉を足していくとどうなるか。結果として出来上がるのは、「最新の技術で、社会に貢献し、すべての人を笑顔にする」といった、誰も反対しないけれど、何の戦略性もない丸い言葉です。

ミッションは、全員の意見を足して割った「平均点」であってはいけません。誰かが反対してでも突き進むべき、鋭い「矢印」でなければならないのです。

現場は「言葉のプロ」ではなく「実態のプロ」である

AAII編集部: では、ミッション策定において現場の社員は巻き込まない方が良いのでしょうか。

フジヰ: いえ、現場の社員を巻き込むこと自体は絶対に必要です。間違えているのは「言葉(コピー)を作る作業」を現場に任せてしまうことです。

現場の社員は、コピーライターではありません。しかし彼らは、お客様が日々何に悩み、自社のサービスが社会のどんな不便を解消しているのかを知り尽くしている「実態のプロ」です。

AAII編集部: 言葉を作らせるのではなく、実態を引き出す場にするのですね。

フジヰ: はい。ワークショップを行うのであれば、「どんなミッションが良いか」を議論させるのではなく、「うちの会社がなくなったら、世の中の誰が一番困るか?」「今の業界の常識で、一番おかしいと思うことは何か?」という、泥臭い事実や憤りを引き出す場にすべきです。

現場からは、きれいに整った言葉ではなく、「熱量」と「素材」だけをもらえばいいのです。

経営トップの「独断」と、プロによる「翻訳」

AAII編集部: 現場から集めた素材を、どうやって強いミッションへと昇華させるのでしょうか。

フジヰ: そこから先は、経営トップの「独断」と、私たちのようなクリエイティブのプロによる「翻訳」の領域です。

集まった大量の素材や社会への憤りの中から、「自社が本当に戦うべき領域はどこか」「どの古い価値観を倒すべきか」を、経営トップが責任を持って決断(戦略の策定)します。

そして、その決断を、プロのコピーライターが詩的な美しさと論理性を兼ね備えた「強靭な言葉」へと翻訳します。100案以上の表現を検証し、不要な言葉を削ぎ落とし、一番鋭く刺さる一本の矢じりを創り上げるのです。

事例:現場の「怒り」を戦略的ミッションに変換する

AAII編集部: フジヰさんが過去に担当されたプロジェクトで、現場の声をミッション策定に活かした事例はありますか。

フジヰ: 私が担当した、大手人材サービスのプロジェクトがまさにそうでした。

現場のトッププレイヤーたちにヒアリングを行うと、「今の世の中の採用基準はおかしい」「もっと個人のポテンシャルを見っるべきなのに、企業側が古い価値観に縛られている」という、強い怒りやジレンマがたくさん出てきました。

AAII編集部: それはまさに、現場の「実態」であり「素材」ですね。

フジヰ: ええ。ただ、彼らの言葉をそのまま繋ぎ合わせてもミッションにはなりません。

私たちは、その現場の「古い採用基準への怒り」を経営陣と共有し、自社が倒すべき敵を「旧態依然とした昭和的な労働の価値観」と定義しました。そして、それを打ち破るための『企業と個人の共創』という強烈な戦略(ミッション)へと翻訳したのです。

最終的な言葉は経営陣と私たちプロで決断しましたが、その根底には間違いなく現場の生々しい怒り(素材)が流れています。だからこそ、完成したミッションを見た現場の社員たちは「自分たちの想いが、会社の向かうべき大きなベクトルになった」と強く共感し、事業が爆発的に加速したのです。

AAII 企業理念・VMV開発支援:全員の想いを「一つの強い矢印」へ

ミッション策定は、民主主義ではありません。全員の意見を丸くまとめたスローガンでは、激しいビジネスの競争を勝ち抜くことはできません。

AAIIでは、ワークショップで付箋をまとめて終わり、といった表面的な策定支援は行いません。現場の社員から泥臭い実態と熱量を徹底的に引き出し、経営トップの戦略的決断と掛け合わせます。

そして、誰も反対しない無難な言葉ではなく、時には痛みを伴ってでも進むべき道を示す「強靭な矢印」を、プロのコピーライティングの力で共に創り上げます。

組織の熱量を一つにし、事業をスケールさせるための本物のミッションを策定しましょう。

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