企業ブランドの根幹となるミッション・ビジョン・バリュー(MVV)。近年は多くの企業が自社のWebサイトにこれらの言葉を掲げていますが、「それぞれの言葉の繋がりが見えない」「現場の行動に結びついていない」という悩みを抱える経営者も少なくありません。

今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・フジヰにインタビューを実施。MVVが機能している優れた事例を解剖し、3つの言葉が「点」ではなく「線」として連動し、組織の強い軸となるための構造について話を聞きました。

MVVが「点」で終わる企業と、「線」になる企業の違い

AAII編集部: 多くの企業がMVVを策定していますが、それがうまく機能している企業と、形骸化してしまう企業の違いはどこにあるのでしょうか。

フジヰ: 最大の要因は、ミッション、ビジョン、バリューの3つが「一本の線として繋がっているか」という一貫性にあります。

形骸化してしまう企業のMVVを見ると、ミッションでは「社会貢献」を語り、ビジョンでは「業界トップの売上」を語り、バリューでは「挨拶や整理整頓」を語っている、といったケースが散見されます。それぞれ単体で見れば良いことを言っているのですが、言葉と言葉の間に論理的な繋がり(コンテキスト)がないため、現場の社員はどう動けばいいのか迷ってしまいます。

AAII編集部: 言葉がバラバラの「点」になってしまっているのですね。

フジヰ: はい。強いブランドを構築している企業は、この3つが完璧に連動しています。「私たちが目指す世界観(ビジョン)」があり、そのために「今の社会で果たすべき役割(ミッション)」があり、それを実現するために「現場が守るべき行動指針(バリュー)」がある。この構造が明確だからこそ、組織全体が迷いなく同じ方向へ進むことができるのです。

事例1:世界観と現場の行動が直結するスターバックス

AAII編集部: 3つが線として繋がっている具体的な事例を教えてください。

フジヰ: まずは、誰もが知るグローバルブランドであるスターバックスの事例を見てみましょう。彼らのMVV(スターバックスではミッションとバリューとして定義)は、その連動性が非常に優れています。

彼らのミッションは「人々の心を豊かで活力あるものにするために—ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」です。そして、それを実現するためのバリュー(行動指針)として、「お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくります」といった言葉が設定されています。

AAII編集部: ミッションとバリューの繋がりが非常に明確ですね。

フジヰ: その通りです。ただ美味しいコーヒーを売るのではなく、「人々の心を豊かにする居場所(サードプレイス)を作る」というミッションがある。だからこそ、現場のバリスタたちはマニュアル通りの接客ではなく、カップにメッセージを書いたり、お客様との会話を楽しんだりするというバリュー(行動)を自然と体現できるのです。経営の意志と現場の行動が、一本の線で見事に繋がっています。

事例2:巨大組織のベクトルを揃える人材サービスの変革

AAII編集部: フジヰさんが実際に手掛けられたプロジェクトの中で、MVVの連動性を意識した事例はありますか。

フジヰ: 私が過去に携わった、大手人材サービスのプロジェクトが良い例です。数千億円規模の事業において、数千人の社員が同じ方向を向くための強靭な軸が必要でした。

このプロジェクトでは、まずミッション(果たすべき役割)として、旧態依然とした「昭和的な労働の価値観」を打ち破ることを定義しました。そして、そのミッションを全うした先にあるビジョン(目指す世界観)を、企業が個人を一方的に管理するのではなく、双方が対等な立場で「共創」する新しい労働市場の景色として言語化しました。

AAII編集部: ミッションとビジョンがしっかりと結びついていますね。バリューはどのように設定したのでしょうか。

フジヰ: 「共創」というビジョンを実現するために、現場の営業担当者がどう振る舞うべきかをバリューに落とし込みました。目の前の売上のために、企業と求職者のミスマッチを見て見ぬふりをするような行動は、ビジョンに反するため「やらない」と明確にする。日々の提案が、社会の価値観をアップデートすることに繋がっているかを問う。この一貫した構造を作ったことで、巨大な組織のベクトルが一つに揃いました。

事例3:業界の常識を覆すウエディングブランドの立ち上げ

AAII編集部: もう一つ、異なる業界の事例をお願いします。

フジヰ: 私が立ち上げから支援している、ウエディングプロデュース会社「LiiNA」の事例をお話しします。

彼らのビジョンは「結婚式を、人生の目的を再確認する本質的なライフイベントへと昇華させる」というものです。この世界観を実現するためのミッションとして、「型にはまったパッケージ型の大量生産ウエディングを排除し、お二人の人生に徹底的に寄り添う」という役割を定義しました。

AAII編集部: ここでも「やらないこと」が明確になっていますね。

フジヰ: はい。そして最も重要なのがバリューです。このミッションとビジョンを実現するため、現場のプランナーの行動指針として「その提案は、本当に新郎新婦の人生のためになっているか?」を常に問い直すというバリューを設定しました。

もし、効率や利益だけを優先した提案をしようとすれば、それはバリューに反し、ミッションを裏切り、ビジョンから遠ざかることになります。このように3つの言葉が連動していると、MVVは単なるスローガンではなく、現場の強烈な「自己評価の基準」として機能し始めるのです。

AAII 企業理念・VMV開発支援:事業の軸となる「一貫性」をデザインする

ミッション、ビジョン、バリュー。この3つの言葉は、それぞれ別々に考えるものではありません。経営戦略という一つの幹から伸びる、太くしなやかな枝葉のようなものです。

AAIIでは、言葉を単発で切り出して制作することはありません。事業のビジネスモデル、業界の構造、そして経営者の熱量を深く理解した上で、目指す世界観から現場の行動指針まで、全く矛盾のない「一貫性」をデザインします。

クリエイティブの表現力と、事業の論理性を融合させる。そして、すべてのステークホルダーが同じ未来を信じて動けるような、強靭なブランドの軸を共に創り上げましょう。

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