ミッション、ビジョン、バリュー(VMV)の中でも、最も言葉の抽象度が高く、経営者の頭を悩ませるのが「ビジョン」です。ネットで「ビジョンの意味」と検索すると「展望」「将来の構想」「理想像」といった言葉が出てきますが、それをそのまま自社に当てはめても、なかなか組織を動かす力にはなりません。
今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・フジヰにインタビューを実施。ビジネスにおける「ビジョンの本当の意味」と、社員やステークホルダーが思わず「その未来、私も一緒に創りたい!」と共創の輪に加わりたくなるような、解像度の高い未来予想図の描き方について話を聞きました。
「業界ナンバーワン」はビジョンではなく、ただの売上目標である
AAII編集部: 「ビジョン」という言葉の意味を調べると、将来の理想像や展望といった解説がよく見られます。実際に企業のビジョンを見てみると「業界のリーディングカンパニーになる」といった言葉をよく見かけますが、これは正しいビジョンのあり方なのでしょうか。
フジヰ: 結論から言うと、「業界ナンバーワン」や「売上〇〇億円を目指す」といった言葉は、ビジョンではなく単なる「経営陣の目標数値」です。
もちろん、事業を成長させる上でそうしたマイルストーンを置くことは極めて重要です。しかし、それをそのまま会社の「ビジョン」として掲げてしまうと、現場の社員の心は間違いなく冷めてしまいます。なぜなら、会社が業界ナンバーワンになったところで、それは経営陣や株主が嬉しいだけであり、現場の社員や世の中の顧客にとって「どんなワクワクする未来が待っているのか」が全く想像できないからです。
AAII編集部: 自分ごととして捉えられないわけですね。
フジヰ: その通りです。ビジョンの本当の意味とは、会社都合の目標を語ることではありません。「私たちがミッション(果たすべき役割)を全うし続けた先に、世の中はこういう素晴らしい状態になっているはずだ」という、解像度の高い『未来の景色』を社会に向けて提示することなのです。
社員が「この指とまれ」で集まる求心力の源泉
AAII編集部: 未来の景色を提示することが、組織にどのような影響を与えるのでしょうか。
フジヰ: 最も大きな影響は、組織に圧倒的な「求心力」が生まれることです。
今の時代、優秀な人材は単に「給料が高いから」「安定しているから」という理由だけでは働きません。彼らは「この会社は、世の中をどう面白くしようとしているのか」「自分がここで働くことで、どんな未来の景色を見ることができるのか」という『意味』を求めています。
解像度の高い鮮やかなビジョンは、まさに「この指とまれ」の旗印として機能します。経営者が描く未来の景色に強烈な共感が生まれれば、社員だけでなく、顧客や外部のパートナー企業すらも「その未来づくりに一枚噛ませてほしい」と集まってきます。これが、これからの時代に不可欠な「共創」の土台になるのです。
解像度の高い「景色」を描く3つの成功事例
AAII編集部: では、誰もがワクワクし、共創したくなる「未来の景色」とは具体的にどのようなものか、事例を教えてください。
フジヰ: 誰もが頭の中に明確な絵(景色)を思い浮かべることができる、優れたビジョンの事例を3つご紹介しましょう。
1つ目は、最も有名かつ完璧なビジョンの一つと言える、草創期のマイクロソフトの事例です。 彼らが掲げたのは「すべてのデスクと、すべての家庭に1台のコンピューターを」というビジョンでした。当時のコンピューターは一部の専門家だけが使う巨大で高価な機械でしたが、ビル・ゲイツの頭の中には、誰もが当たり前のようにPCを操作している未来の景色が鮮明に見えていました。この言葉には、「IT業界のトップになる」といった退屈な表現にはない、極めて視覚的でワクワクする具体的な景色があります。
AAII編集部: 確かに、言葉を聞いただけでその状況が目に浮かびますね。2つ目の事例はいかがでしょうか。
フジヰ: 2つ目は、私が立ち上げからブランディングを支援している、ウエディングプロデュース会社の事例です。 ブライダル業界でビジョンを作ろうとすると、どうしても「最高の笑顔を創る」「感動を提供する」といった抽象的な言葉に逃げてしまいがちです。しかし私たちは、そうした手垢のついた言葉を捨てました。
彼らが本当に見たい景色は、ベルトコンベア式に量産される結婚式ではなく、「結婚式というものが、二人の人生に徹底的に寄り添う、本質的で不可欠なライフイベントとして捉え直されている世界」でした。だからこそ、表面的な笑顔や感動を語るのではなく、業界の常識をアップデートし、新郎新婦の価値観が根底から変わるような『新しい結婚式のあり方が当たり前になった景色』を言語化しました。
AAII編集部: 抽象的な感情表現ではなく、社会の常識がどう変わった状態なのかを描くのですね。では、3つ目をお願いします。
フジヰ: 3つ目は、私が過去にVMVの策定に携わった、大手人材サービスの事例です。 彼らのミッションは、旧態依然とした昭和的な労働の価値観(ラスボス)を倒すことでした。では、そのミッションを全うした先にあるビジョン(景色)は何か。
それは単に「転職がしやすい社会」ではありません。企業が個人を一方的に管理する時代が終わり、個人と企業が対等な立場で『共創』し、誰もが自分のポテンシャルを最大限に発揮して熱狂している労働市場という景色です。この「共創が当たり前になった社会」という未来図を明示することで、社内の数千人の営業担当者が「自分たちは単なる人材ブローカーではなく、新しい労働市場という景色を創っているんだ」という強烈な誇りを持つことができました。
経営者の脳内にある「未来」を言葉という器へ移す
AAII編集部: 素晴らしいビジョンには、必ず「誰の目にも見える景色」があるのですね。自社でビジョンを作る際、何から手をつければよいでしょうか。
フジヰ: まずは、経営者が「もし自分たちの事業が完全に成功して、世の中に普及しきったら、世界はどう変わっているか?」を徹底的に妄想することです。
どんな人が、どんな表情で、どんな風に自社のサービスを使っているか。その時、ライバル企業はどうなっているか。社会の古い常識はどう打ち破られているか。その脳内にあるイメージの解像度を極限まで高めていきます。
そして、その見えた景色を、今度は「言葉」という器に移し替えます。この時、業界の専門用語や、誰にでも言える無難な表現を使ってはいけません。人の感情を動かす詩的な美しさと、向かうべき未来を示す力強い論理性を掛け合わせたコピーへと翻訳していくのです。
AAII 企業理念・VMV開発支援:共創を生み出す未来の景色を描く
ビジョンの意味を辞書で調べ、なんとなく未来っぽい言葉を並べても、誰もその船には乗りたがりません。ビジョンとは、経営者の頭の中にある「この社会をこう変えたい」という強烈な未来予想図を、全員で共有できる鮮やかな景色へと翻訳することです。
AAIIでは、経営陣への深いヒアリングを通じて、事業の延長線上にある「ありきたりな未来」ではなく、社会の常識をアップデートする「ワクワクする未来の景色」を共に描き出します。
そして、アートディレクションとコピーライティングの力で、社員が誇りを持ち、ステークホルダーが思わず「この指とまれ」で集まってくるような、圧倒的な求心力を持つ言葉へと磨き上げます。
壁に飾るための目標ではなく、組織の熱量を最大化する未来予想図を共に創り上げましょう。
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