素晴らしい企業理念やVMV(ビジョン・ミッション・バリュー)を掲げているにもかかわらず、業績が伴っていない。現場の動きが鈍い。そんな企業に共通して欠けているのが、理念と現場を繋ぐ「経営方針」の存在です。
今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・フジヰにインタビューを実施。抽象的な理念を、日々の業務や「数字(KPI)」へと変換し、組織を推進させるための接続の技術について話を聞きました。
経営方針とは、理念と数字を繋ぐ「架け橋」である
AAII編集部: 企業理念やVMVと、「経営方針」とは何が違うのでしょうか。
フジヰ: 企業理念やVMVが「目指すべき目的地と、そこへ向かうためのスタンス」だとすれば、経営方針は「その目的地へ向かうための、具体的なルートと燃料計算」です。
どれだけ美しい理念を掲げても、「今年度はどの市場を狙うのか」「予算をどこに集中させるのか」「現場に何の数字(KPI)を追わせるのか」という経営方針が明確でなければ、現場は一歩も動けません。経営方針とは、抽象的な言葉の世界を、生々しい「数字」と「アクション」の次元へと引き下ろす架け橋なのです。
世の中の実例:トヨタの理念が「数字」に変わるまで
AAII編集部: 理念が経営方針や数字へと見事に落とし込まれている、世の中の具体的な事例はありますか。
フジヰ: 最も分かりやすく強力な実例が、トヨタ自動車です。彼らの根底には「豊田綱領」という、社会貢献や研究創造を重んじる絶対的な理念があります。
しかし、彼らが世界一の企業になったのは、その理念をただ唱和したからではありません。その理念を実現するための経営方針として、「無駄を徹底的に排除する」というルールを敷き、「ジャスト・イン・タイム」や「カンバン方式」といった極めて具体的な現場のシステム(TPS)へと落とし込んだからです。
AAII編集部: 理念がシステムや数字に直結しているのですね。
フジヰ: はい。現場の作業員は「社会貢献のために」と抽象的に悩むのではなく、「目の前の工程で1秒の無駄(数字)をどう削るか」に集中します。そしてその数字の達成が、結果として社会貢献という大きな理念の実現に直結する。これが、理念が経営方針を通じて現場のアクションへと完璧に翻訳された状態です。
クリエイターが「事業のKPI」を理解しなければならない理由
AAII編集部: 理念を経営方針(数字)に接続する上で、壁になるものは何でしょうか。
フジヰ: 理念を作る側(クリエイティブ)と、数字を追う側(ビジネス)の「分断」です。
世の中の多くのデザイン会社やコピーライターは、美しい言葉やロゴを作ることは得意ですが、クライアントの「事業のKPI」や「マーケティングのCPA(顧客獲得単価)」にまでは責任を持ちません。だから、作られた理念が現場の数字と乖離し、浮いてしまうのです。
AAII編集部: フジヰさんご自身は、その分断をどう埋めているのでしょうか。
フジヰ: 私はリクルートという、日本で最もKPI管理や事業戦略が徹底された環境に身を置き、戦略部隊と連携して数字を追ってきました。
だからこそ、クリエイター特有の「美しいポエムを作って終わり」という仕事には強い危機感を持っています。自分で戦略の数値をゴリゴリに組むわけではなくとも、経営陣がどういう数字のロジックで動いているのか、現場がどんなKPIを背負って疲弊しているのかを理解できなければ、本当に機能する言葉(VMV)など作れるはずがないのです。
実例:ウエディングブランドにおける「理念とマーケティング」の融合
AAII編集部: フジヰさんが実際に手がけられたプロジェクトで、理念を具体的な方針やアクションに落とし込んだ事例を教えてください。
フジヰ: 現在、私がVMVの策定から社名、ロゴ、そしてマーケティング支援まで一貫して伴走しているウエディングプロデュース会社「LiiNA」の事例があります。
彼らの「徹底的にお客様の人生に寄り添う、本質的な結婚式を創る」という理念は非常に強力です。しかし、これを単なるスローガンで終わらせず、実際の「経営方針」や「マーケティング戦略」へと接続しなければ事業は回りません。
AAII編集部: 具体的に、どのような方針へと接続したのでしょうか。
フジヰ: たとえば、集客のアクションです。理念を体現するためには、大量の広告費を投下して薄いリード(見込み客)を大量に集めるような、既存の結婚式場と同じマーケティング手法(方針)は「やらない」と決めました。
その代わり、本当に彼らの価値観に共感してくれる層だけを狙い撃ちにするためのブランドコミュニケーションを設計し、また、事業を安定させるために別軸でのアフィリエイト収益構造を構築するなど、泥臭いマーケティングの数字作りにまで踏み込んで支援しています。理念という「理想」と、日々の集客や売上という「現実の数字」。この両輪を回す経営方針があって初めて、ブランドは立ち上がるのです。
AAII 企業理念・VMV開発支援:ポエムで終わらせず、事業の数値に直結させる
経営方針が定まっていない企業理念は、ただのポエムです。逆に、理念のない経営方針は、社員を数字で縛り付けるだけの冷酷なマニュアルになってしまいます。
AAIIでは、ただ耳触りの良い言葉を提案することはありません。リクルートをはじめとする厳しい事業環境で培った「ビジネスと数字への理解」と、人の心を動かす「アートディレクター/コピーライターとしての表現力」。この両極端な視点を掛け合わせることで、経営陣の理想を、現場が追いかけるべき明確な方針とアクションへと翻訳します。
組織の熱量を高め、同時に事業の数字を確実に動かす。そのための強靭な経営の軸を共に創り上げましょう。
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