ビジョン(目指す世界観)とミッション(果たすべき役割・戦略)が定まり、いざ現場の社員に向けた「行動指針(バリュー)」を作ろうとした時、多くの企業が壁にぶつかります。

「顧客第一を徹底する」「誠実な対応を心がける」「法令を遵守する」——。出てくる言葉がどれも当たり前のルールになってしまい、これでは現場の行動は何も変わらないと頭を抱える経営者は少なくありません。

今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・フジヰにインタビューを実施。当たり前のスローガンから脱却し、現場の社員の「マインドセット」を根本から変え、自走する組織を創り出すための行動指針の作り方について話を聞きました。

「当たり前のルール」は行動指針ではない

AAII編集部: 行動指針を作ろうとすると、どうしても「誠実」「顧客第一」といった無難な言葉になりがちです。なぜなのでしょうか。

フジヰ: それは、行動指針を「社員に守らせるべき道徳やルール」だと勘違いしているからです。

挨拶をする、嘘をつかない、法令を遵守する。これらはビジネスパーソンとして、あるいは企業として「大前提の条件」であって、わざわざ行動指針として掲げるものではありません。もしそうした言葉を掲げなければならないほど組織が荒れているのだとしたら、それは言葉以前に採用やマネジメントの構造的な問題です。

AAII編集部: ルールを明文化するのとは違うのですね。

フジヰ: 全く違います。前回の記事でも触れましたが、ミッションが「自社が戦う市場や、やらないことを決める『戦略』」であるのに対し、バリュー(行動指針)の役割は「現場の毎日の仕事への『意味づけ(マインドセットの転換)』」です。

今日やるべき目の前の仕事が、どれほど社会にとって意味のあることなのか。自分たちは単なる作業者ではなく、何に挑むチームなのか。それを定義し、現場のモチベーションと誇りを引き出すことこそが、行動指針の本当の目的なのです。

ステップ1:現場の「泥臭い葛藤」を拾い上げる

AAII編集部: では、具体的にどのように作っていくのでしょうか。

フジヰ: 最初のステップは、会議室で経営陣だけで考えるのをやめ、現場の「泥臭い葛藤」を徹底的に拾い上げることです。

どんな企業でも、現場は必ず何かしらのジレンマやマンネリを抱えています。日々の業務が単調な処理作業になってしまっている。他部署との間に摩擦(ハレーション)が起きている。あるいは、目の前の売上目標と顧客への誠実さの間で板挟みになっている。

AAII編集部: きれいな理想ではなく、生々しい課題を見つけるのですね。

フジヰ: はい。行動指針は、まさにその「現場が一番迷い、苦しんでいる瞬間」に機能しなければ意味がありません。現場が何に葛藤し、どんなマインドセットの壁にぶつかっているのかをヒアリングし、言語化の土台となる「課題(倒すべきマンネリや分断)」を明確にします。

ステップ2:作業を「クリエイティブな仕事」へ再定義する

AAII編集部: 現場の課題を見つけた後はどうするのでしょうか。

フジヰ: ステップ2は、その課題を打ち破るための「アイデンティティの再定義」です。

私が過去に携わった大手婚活サービスのプロジェクトを例に挙げましょう。当時の現場は、膨大な顧客データを処理する中で、日々の業務が「フォーマット作業」に陥るというマンネリを抱えていました。

ここで「もっと丁寧にお客様と向き合おう」といったルールを押し付けても、現場の心には響きません。そこで私たちは、彼らの仕事を再定義しました。

AAII編集部: どのように再定義したのですか。

フジヰ: 「ひとりひとり違うお客様に対して、ご縁を結ぶためにゼロから考え、発明する存在になろう」と定義したのです。これは「ただのデータ処理の作業者」から、「クリエイティブな課題解決を行う発明者」へのアイデンティティの転換です。

行動指針を作る上で最も重要なのは、現場の社員が「自分たちの仕事はこんなにも誇り高いものだったのか」と気づき、ハッとさせられるような新しい視点(意味づけ)を提供することです。

ステップ3:日常で飛び交う「機能する共通言語」に翻訳する

AAII編集部: 仕事の意味づけができた後は、それを言葉に落とし込むステップですね。

フジヰ: はい。最後のステップ3で、その意味づけを「現場で日常的に使える短い言葉」へと翻訳します。

どんなに素晴らしい意味づけができても、「私たちは常にお客様の背景を想像し、ご縁を結ぶために新しいアイデアを出し続けます」といった長い文章にしてしまうと、誰も覚えてくれません。

先ほどの大手婚活サービスの例で言えば、最終的な言葉は「縁を結ぶ発明者になろう」といった、極めてシンプルで強いメッセージに研ぎ澄ましました。

AAII編集部: 短くすることで、使いやすくなるのですね。

フジヰ: その通りです。理想は、社内のチャットや日々の会話の中で「今の対応、すごく発明だったね」「もっと発明できるんじゃない?」と、息をするように飛び交うレベルまで言葉を短く、そしてポジティブな「動詞」や「アクション」に変換することです。言葉が共通言語として組織のインフラになった時、行動指針は初めて現場を自走させるエンジンになります。

AAII 企業理念・VMV開発支援:ルールではなく、組織を動かす熱を創る

行動指針(バリュー)は、社員を縛り付けるための退屈なマニュアルではありません。それは、現場のマンネリを打破し、部門間の壁を越え、一人ひとりの仕事に強烈な誇りと熱量をもたらすためのクリエイティブな装置です。

AAIIでは、当たり前の道徳を並べただけの言葉は作りません。現場の社員が日々何と戦い、どんな葛藤を抱えているのかという生々しい実態に寄り添い、プロのアートディレクターとコピーライターの視点で、仕事の価値を再定義します。

そして、会議室のポスターではなく、現場の日常会話の中で力強く躍動する「機能する言葉」へと翻訳します。社員が自ら考え、自走し始めるための本物の行動指針を、共に創り上げましょう。

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