自社のWebサイトや会社案内を開くと、必ずと言っていいほど「17色のカラフルなSDGsのホイールロゴ」が掲載されている時代になりました。社会課題の解決に取り組む姿勢を示すことは、現代の企業にとって不可欠な要素です。
しかし、そのトレンドに便乗し、SDGsの目標をそのまま「自社の経営理念」や「ミッション」として掲げてしまう企業が急増しています。実はこれこそが、企業から個性を奪い、組織を思考停止に陥らせる危険な罠なのです。
今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・フジヰにインタビューを実施。SDGsという「世界共通の正解」に飲み込まれず、自社にしか語れない強烈なアイデンティティ(理念)を創り出すための言語化の技術について、深く掘り下げて話を聞きました。
SDGsのバッジが、自社のアイデンティティを奪う理由
AAII編集部: SDGsの達成を企業理念に掲げることは、社会的に見れば非常に正しいことのように思えます。何が「罠」なのでしょうか。
フジヰ: おっしゃる通り、SDGsが掲げる目標自体は「100%正しいこと」です。貧困をなくす、環境を守る、働きがいを追求する。これらに反対する人は世界中どこにもいません。
しかし、「誰もが正しいと認める世界共通の目標」であるからこそ、それをそのまま自社の理念にしてしまうと、致命的な問題が発生します。それが「意味のコモディティ化(没個性)」です。
AAII編集部: 意味のコモディティ化、とは具体的にどういう状態ですか。
フジヰ: たとえば、ある製造業が「持続可能な社会の実現に貢献する」という理念を掲げたとします。しかし、全く同じ理念を、隣の競合他社も、IT企業も、アパレル企業も掲げています。
ミッションや理念とは本来、「なぜ、他の誰でもなく『我々』がこの事業をやるのか」という強烈な存在意義の証明です。それにもかかわらず、国連が作った「みんなの目標」を借りてきて看板に据えてしまえば、「我々である必要性」は一瞬で消滅します。SDGsのバッジを胸につけた瞬間、その企業は「社会にいいことをしている無数の企業のうちの一つ」に埋没してしまうのです。
世の中の実例:ユニリーバは「SDGs」という言葉に依存しない
AAII編集部: では、サステナビリティに本気で取り組んでいる企業は、理念とSDGsをどのように切り分けているのでしょうか。
フジヰ: 世界的な消費財メーカーであるユニリーバの事例が非常に象徴的です。彼らはSDGsの推進企業として世界トップクラスの評価を受けていますが、彼らの根幹にあるパーパス(存在意義)は「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」という、自らの事業に根ざした独自の言葉で定義されています。
彼らは「SDGsの目標〇番に貢献します」といった、国連の枠組みに従属するような言い方はしません。あくまで「自分たちのビジネスを通じて、社会をどう変えるか」という自社のスタンスが主語であり、その結果としてSDGsの達成が後からついてくる、という構造を徹底しているのです。
AAII編集部: 主従関係が逆転してはいけないのですね。
フジヰ: その通りです。SDGsは「評価のチェックリスト」としては優秀ですが、企業を牽引する「エンジンの設計図(理念)」にはなりません。強い企業は決して、自分たちのアイデンティティを外部の流行り言葉に明け渡すことはないのです。
実例:国連の言葉を捨て、現場の「体温」へと翻訳する
AAII編集部: フジヰさんご自身のプロジェクトにおいて、SDGs的な要素を「自社の言葉」へと変換した実例はありますか。
フジヰ: 以前に伴走した、大手都市開発コンサルティング企業のプロジェクトが良い例です。
彼らの事業は、都市計画やインフラ整備、防災対策など、まさにSDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」のど真ん中を行くものでした。そのため、ミッションを策定する初期段階では、どうしても「持続可能な都市空間の創造」や「強靭なインフラ構築による社会貢献」といった、SDGsの優等生のような、硬くて冷たい言葉ばかりが並んでしまったのです。
AAII編集部: 事業内容とSDGsの相性が良すぎるがゆえの悩みですね。
フジヰ: ええ。しかし、現場で泥臭く図面を引き、地域住民と対話している技術者たちに、「今日から君たちのミッションは、SDGsの目標11の達成だ」と言って、血が通うでしょうか。絶対に響きません。
そこで私たちは、国連の定めた官僚的な言葉をすべて捨てました。「持続可能」や「インフラ」といった横文字を剥がし、彼らが本当にやりたいことの本質を極限まで削り出した結果生まれたのが、「いいまちつくろう」という言葉です。
AAII編集部: 非常にシンプルで、体温を感じる言葉ですね。
フジヰ: はい。SDGsの文脈を内包しながらも、決して国連の言葉は借りない。自分たちの手で、自分たちの「まち」を創るんだという、人間臭い意志へと翻訳したのです。世界共通の冷たい正解を、自分たちの組織にしか宿らない「熱狂の旗印」へと変換する。これが、理念策定におけるクリエイティブの真髄です。
AAII流:SDGsを「自社の武器」へと変換する3つの思考法
AAII編集部: 自社で理念を見直す際、SDGsに飲み込まれないための具体的な思考法はありますか。
フジヰ: 以下の3つのステップで、言葉を再構築することをお勧めします。
- 主語を「社会」から「自社」に戻す 「社会課題を解決する」という大きな主語を、「『私たち(自社)』のこの技術・この歴史だからこそ、この課題を放置できない」という独自の文脈に引き戻します。
- 「チェックリスト」を「スタンス」に変える 「環境に配慮しているか」「多様性はあるか」といったSDGsの網羅的なチェックリストを追うのをやめます。自社の事業にとって最も切実な「たった一つの戦うべき歪み」に焦点を絞り、鋭利なスタンスを形成します。
- 最終アウトプットから「SDGs」の文字を消す 完成したミッションやビジョンのコピーから、あえて「SDGs」や「持続可能」という直接的な単語を排除します。それでもなお、自社の目指す未来がサステナブルな社会と完全にリンクしている状態。それこそが本物の言語化です。
AAII 企業理念・VMV開発支援:借り物のバッジを外し、自社の旗を立てる
SDGsのホイールロゴをWebサイトに載せることは、今の時代においてパスポートのようなものです。しかし、パスポートを持っていることと、どこに向かって旅をするか(理念)は全く別の話です。
AAIIでは、流行りのキーワードを切り貼りしただけの「どこかで見たことのある理念」は絶対に作りません。経営陣の泥臭い原体験、自社が培ってきた独自の技術やカルチャーを徹底的に掘り起こし、国連の言葉すらも「自社の色」に染め上げる強靭なコピーライティングを提供します。
みんなと同じ正しい言葉の陰に隠れるのをやめ、組織を強烈に牽引する「自社だけの旗」を共に立てましょう。
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