自社のWebサイトや採用パンフレットに掲載されている「経営理念」。それを見て、現場の社員が奮い立ったり、顧客が共感してくれたりしている実感はありますか?
もし、ただ「いいこと」が書いてあるだけで誰の記憶にも残っていないとしたら、それは機能していない「ダメな経営理念」になっている可能性が高いです。
今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・フジヰにインタビューを実施。現場を冷めさせ、壁の飾りで終わってしまう経営理念の共通点と、それを「機能する武器」へと変えるための視点について話を聞きました。
ダメな経営理念に共通する「3つの特徴」
AAII編集部: 世の中には機能していない「ダメな経営理念」が溢れているように感じます。プロの目から見て、それらにはどのような共通点があるのでしょうか。
フジヰ: 大きく分けて、次の3つの特徴があります。
1つ目は、「誰にでも言える『丸い言葉』になっていること」です。 「社会に貢献する」「お客様の笑顔のために」「最新のテクノロジーで」といった、辞書に載っているようなきれいな言葉を繋ぎ合わせただけの理念です。同じ業界の競合他社がそのまま使っても違和感がない言葉は、自社のアイデンティティを何も証明しておらず、現場の判断基準にもなりません。
2つ目は、「『数字の目標』と混同していること」です。 「業界ナンバーワンを目指す」「売上〇〇億円を達成する」といった経営計画を理念として掲げてしまうパターンです。数字は経営陣の目標であって、社会に対するスタンス(意味)ではありません。
3つ目は、「『やらないこと』が定義されていないこと」です。 強い理念とは、「私たちはこういう社会を創るために、これは絶対にやらない」という明確なスタンスです。八方美人で誰にでも好かれようとする言葉には、組織を牽引するエッジが生まれません。
世の中の実例:立派な言葉を掲げて崩壊した「エンロン」
AAII編集部: 言葉だけが立派で、中身が伴っていない実例といえば何でしょうか。
フジヰ: 「ダメな経営理念(バリュー)」を語る上で、世界のビジネス史に悪名高く刻まれている究極の実例が、米国の巨大エネルギー企業であったエンロンです。
彼らは「コミュニケーション」「リスペクト」「インテグリティ(誠実さ)」「エクセレンス(卓越性)」という、誰もがぐうの音も出ないほど立派で美しい4つのバリューを掲げ、オフィスのロビーに大々的に刻んでいました。
AAII編集部: 言葉だけを見れば、素晴らしい企業ですね。
フジヰ: はい。しかし実態は、そのバリューとは真逆でした。利益至上主義の過酷な社内競争が横行し、最終的には巨額の不正会計を引き起こして破綻しました。
どんなに美しく立派な言葉(ポエム)を作って壁に飾っても、それが現場の「日々の判断基準」や「評価制度」と直結していなければ、理念は一瞬で嘘になります。エンロンの事例は、言葉と実態が乖離した経営理念がいかに虚無であるかを証明しています。
実例1:ウエディング業界の「手垢のついた丸い言葉」を捨てる
AAII編集部: フジヰさんが実際のプロジェクトで、「丸い言葉」の罠を回避した事例を教えてください。
フジヰ: 私が立ち上げから伴走している、ウエディングプロデュース会社の事例をお話しします。
ウエディング業界で理念を作ろうとすると、どうしても「最高の笑顔を創る」「一生に一度の感動を」といった、耳触りが良く誰からも反対されない「丸い言葉」に逃げてしまいがちです。しかし、感動や笑顔を提供するのはウエディングにおいて大前提であり、わざわざ理念として掲げるほどの戦略性がありません。
そこで私たちは、既存の結婚式場の「パッケージ化された大量生産型の結婚式」を業界の歪みと捉え、それを打ち破るために「結婚式を、人生の目的を再確認する本質的なライフイベントへと昇華させる」というスタンスを言語化しました。
AAII編集部: 「笑顔」というフワッとした言葉から、明確な意志に変わりましたね。
フジヰ: はい。「ただ笑顔にする」のではなく、「お客様の価値観をアップデートする」と定義したことで、現場のプランナーは「この提案は、お二人の人生にとって本当に本質的か?」と自問自答できるようになりました。無難な言葉を捨て、強いスタンスを削り出したからこそ、現場の武器として機能し始めたのです。
実例2:要素を詰め込んだ「小難しい長文」を削ぎ落とす
AAII編集部: もう一つ、ダメな理念が陥りがちな罠はありますか。
フジヰ: 専門性の高い企業や、合併して大きくなった企業に非常に多いのが、「各部署の顔を立てて要素をすべて盛り込んだ結果、小難しくて誰も覚えられない長文になってしまう」という罠です。
私が過去に伴走した、大手都市開発コンサルティング企業のプロジェクトがまさにそうでした。都市計画、土木、システム開発など、多様な専門家が集まる組織において、全員の業務内容を網羅しようとすると「多様な技術と知見を融合し、人が輝く持続可能な都市空間の創造を通じて社会に貢献する」といった、教科書のような退屈な文章が出来上がってしまいます。
AAII編集部: 正しいことを言っていますが、長くて覚えられませんね。
フジヰ: ええ。現場の誰も暗唱できない理念は、存在しないのと同じです。
そこで私たちは、複雑な専門性や業務説明をすべて削ぎ落とし、ただ一点、全員が向かうべき共通の目的だけを残しました。それが「いいまちつくろう」という極めてシンプルでキャッチーな言葉です。
小難しい言葉をこねくり回すのではなく、バラバラな専門家集団が一瞬で同じ未来の景色を想像できる言葉。それこそが、分断された組織を一つに束ねる最強の理念になります。
AAII 企業理念・VMV開発支援:「誰にでも言える言葉」を今すぐ捨てる
自社のWebサイトを開き、経営理念を読んでみてください。その言葉の主語を「競合他社の社名」に入れ替えても違和感なく成立してしまうなら、あるいは、長すぎて社員の誰も暗唱できないのなら、それは今すぐ見直すべきタイミングです。
AAIIでは、きれいな単語をパズルのように組み合わせるだけの表面的な理念策定は一切行いません。経営者の頭の中にある社会への憤りや、現場の泥臭い戦い方を徹底的に掘り下げ、あなたの会社にしか絶対に語れない「強靭な言葉」へと翻訳します。
壁に飾るだけのポエムを捨て、組織の熱量を爆発させる本物の理念を共に創り上げましょう。
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