近年、ビジネスの現場で「パーパス(存在意義)」という言葉を見かける機会が爆発的に増えました。「パーパス経営」という言葉がトレンドになり、自社のWebサイトの「ミッション」という見出しを、慌てて「パーパス」に書き換える企業も少なくありません。
しかし、言葉のラベルを流行りのものに掛け替えただけで、組織の何かが変わるのでしょうか。
今回は、AAIIのクリエイティブディレクター・フジヰにインタビューを実施。「パーパス」と「ミッション」の本質的な違いと、トレンドの言葉に踊らされず、本当に組織を動かす「自社の軸」を創り出すための思考法について話を聞きました。
パーパス(存在意義)とミッション(果たすべき役割)の違い
AAII編集部: 最近「パーパス」を掲げる企業が増えましたが、従来の「ミッション」とは何が違うのでしょうか。
フジヰ: 言葉の定義として厳密に分けるならば、パーパスは「Why(なぜ我々はこの社会に存在するのか)」であり、ミッションは「What / How(そのために、我々は何を成し遂げるのか)」です。
パーパスは、企業の根源的な存在理由であり、時代が変わっても絶対に揺るがない「魂」のようなものです。一方ミッションは、その魂を持った上で、「今のこの社会課題に対して、自分たちはどういう役割を果たし、何を打ち破るのか」という、よりベクトル(方向性)と戦略性を帯びた言葉になります。
AAII編集部: パーパスの方がより根源的で、ミッションの方が戦略的ということですね。
フジヰ: はい。ただ、ここで最も重要なのは「辞書的な定義の違い」を暗記することではありません。
多くの企業が陥っている罠は、「世の中がパーパス経営と言い始めたから、うちもパーパスを作らなきゃ」と、ただの流行りとして言葉を導入してしまうことです。中身の戦略や現場のアクションは何も変わっていないのに、見出しだけを「パーパス」に変えて満足している。これでは、言葉が組織の武器として機能するはずがありません。
世の中の実例:ソニーの「パーパス」が真に機能している理由
AAII編集部: パーパスという言葉を、流行りではなく組織の機能として正しく使えている事例はありますか。
フジヰ: 日本企業におけるパーパス制定の最も優れた実例の一つが、ソニーグループです。
彼らは2019年に「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパスを制定しました。ソニーはエレクトロニクスだけでなく、ゲーム、映画、音楽、金融まで、全く異なる事業を展開する巨大なコングロマリットです。
AAII編集部: 事業が多岐にわたると、一つのミッションで括るのは難しそうですね。
フジヰ: おっしゃる通りです。各事業部で戦う市場も、果たすべきミッションも違います。だからこそ、すべての事業を一つに束ねる「究極のWhy(なぜソニーが存在するのか)」が必要でした。
彼らのパーパスは、「我々がやっていることはすべて、世界を感動で満たすためだ」という強烈な存在意義(Why)を定義しています。このパーパスという上位概念があるからこそ、バラバラの事業部が「ソニー」という一つのブランドとして強固に結びついているのです。流行りだからパーパスを作ったのではなく、「組織を束ねるためにパーパスという概念が必要だった」という必然性がそこにあります。
実例:言葉の「ラベル」よりも「機能」を優先する
AAII編集部: フジヰさんご自身がプロジェクトに伴走される際、「パーパスにするか、ミッションにするか」という相談を受けることはありますか。
フジヰ: 非常によくあります。「今の時代はパーパスですよね?」と聞かれることも多いです。しかし、私はいつも「見出しのラベル(パーパスかミッションか)なんて、実はどうでもいいんです」とお答えしています。
AAII編集部: どうでもいい、とは思い切った発言ですね。
フジヰ: 私が過去にブランディングに伴走した大手事業会社や、現在支援しているウエディングプロデュース会社の事例でも同じです。
重要なのは、「パーパスという箱を埋めること」ではなく、「今のその組織が勝つために、どんな『意味のインフラ』が必要か」を見極めることです。
もし、組織の歴史が古く、何のために事業をやっているのかという魂(Why)を見失っているなら、パーパス的なアプローチが必要です。逆に、存在意義は明確だけれど、現場の空気がマンネリ化して売上が停滞しているなら、必要なのは「自分たちは社会のこの古い価値観を倒すんだ」という、明確な敵と戦略を示したミッション的なアプローチ(What)です。
現場を動かす熱量さえ言葉に宿っていれば、それを「パーパス」と呼ぼうが「ミッション」と呼ぼうが、あるいは独自の「フィロソフィー」と呼ぼうが、結果は同じなのです。
AAII 企業理念・VMV開発支援:流行り言葉を捨て、勝つための武器を創る
「パーパス経営」というバズワードに焦り、他社の真似をして体裁だけを整えても、事業の数字は1円も動きません。言葉は、あなたの会社を前に進めるためのエンジンでなければ意味がないのです。
AAIIでは、世の中のトレンドやフレームワークに自社の理念を無理やり当てはめるような、表面的なコンサルティングは行いません。
経営者が抱える事業の課題と、現場の泥臭い実態を徹底的に分析し、今の組織が勝つために最も必要な「言葉の機能」をプロのクリエイティブで実装します。
流行り言葉のラベルを貼るだけの作業を終わらせ、事業を力強く牽引する本物のインフラ(言葉)を共に創り上げましょう。
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